《雑穀栽培レポート vol.5》風の草刈りと防鳥対策
この投稿はつぶつぶマザーの岩崎信子さんのブログ記事を一部編集して掲載しています。
雑穀栽培レポート 前話 vol.4はこちらから
梅雨が明けて、力強い日差しが降り注ぐ8月、つぶつぶマザー岩崎信子さんの雑穀畑にお邪魔してきました。今回は「風の草刈りと防鳥対策」です。今年信子さんの雑穀体験のレッスンに伺うのはこれで4回目になります。前回も風の草刈りでしたが、まだ梅雨明け前でした。梅雨が明けた今回、雑穀や雑草がどれくらい元気に背丈を伸ばしているか楽しみです。
自己紹介とランチの下準備をしてから、風の草刈りをするために畑に向かいます。もう何度も顔を合わせているので、だいぶ打ち解けた雰囲気になってきました。今日のランチは、ベジバーベキューということで、心がはずみます。
ベジバーベキューの支度はランチの直前にみんなで一斉に野菜を切って素焼きして、タレを作って漬け込むということで、それ以外のメニュー、即席柴漬けを畑に出る前に準備しました。ナス、キュウリ、ミョウガ、ショウガをみんなで手分けして切り、それを漬物用の容器に入れて、梅酢と自然塩と昆布を加えて重しをすれば出来上がりです。
信子さんの「さあ、外へ出るよー」の一声で、畑での作業がいつものように始まります。信子さんのお宅のなかはクーラーが効いていましたが、一歩外に出るとムーンとした容赦ない夏の暑さがやってきます。暑さ対策ということで、いつもより一時間早く9時からのスタートですが、それでもこの暑さです。
信子さんのご自宅のすぐ上にある雑穀畑は、ちょうど穂が出て、これからどんどん実がふくらんできていました。向かって左からアマランサス、もちアワ、もちキビ、ヒエ、シコクビエ、高キビと見事に実をつけていて圧巻の光景です。
農家さんは雑穀が穂を出したら、もう畑には入らないのだそうです。大事な受粉の時期だからということでした。でも畑のなかは気持ちいいので、特別に入ってみようということになりました。花粉を落とさないように、穂には触らず、穂の下から茎を持ち上げるようにして、慎重に作業を進めます。
二回目の風の草刈りの方法は、雑穀の背丈が伸びてきているので、雑穀の高さに合わせて、その少し下で雑草の穂より少し下の部分を鎌で切り落とすというものでした。あまり下から切ってしまうと台風が来たとき、雑穀が倒れてしまうのだそうです。
雑草は、普通の畑でいうところの支柱の役割を果たしています。トマトに支柱を立てて、枝を縛っておくように、自然農を実践する信子さんの雑穀畑では、雑草が雑穀を支えてくれます。
鎌を円状にリズミカルに動かして、雑草の上の部分だけを刈りながら風をおこして前に進むので風の草刈りと呼ぶそうです。人間が雑穀にとっての風になるから風の草刈りなのです。子供がただ畝と畝の間を歩くだけでも、雑穀たちにとっては風が通ってうれしいことと聞き、人間がただそこにいるだけで、自然の営みに貢献する方法をまた一つ教えてもらったと思いました。
「ここ切ってくれる?」と突然、信子さんから声がかかりました。よく見ると、高キビにぐるぐるとツルが巻かれていました。このツル状の雑草をヤブカラシと呼ばれ、藪までも枯らしてしまうからヤブカラシと呼ぶそうです。鎌で切るのは、上からツルをたどっていって、私のちょうど腰くらいの位置です。そこが一番太くて元気でした。
一回切ってしまえば、あとは自然と枯れていくそうです。これを切らないでそのままにしておくと高キビが枯れてしまいます。とても大事な作業です。
(高キビの実が入ったところ。収穫まではもう少し)
風の草刈りを進めていくと、もちキビのエリアに入りました。立派に育っていて、私の胸くらいの位置で、穂が出てたわわに実っています。しだれた穂の先で茶色い実をつけているもちキビがありました。全部の実が茶色になっているのを待っていると、穂の先の一番先に実をつけていた部分の成長が進み、実が落ちてきてしまうそうです。そのため、先の実が茶色くなってきたらもう収穫です。
穂の50センチしたくらいで茎を鎌で切り落とします。先が茶色くなったもちキビが数本あり、一人一本ずつ収穫させてもらいました。実の入ったもちキビはずっしりとした重さがあります。これが、もちキビオムレツやもちキビポテトになるのかと思うとワクワクします。
ヒエのゾーンでは、一面に白い穂が出ていましたが、よく見ると茶色く変色した穂がちらほらありました。これは、虫食いだそうです。アワノメイガという虫が茎のなかに入ってしまうと茶色くなるということでした。
一時間ほど作業したところで、参加者のみなさんのマイ畑がある下の畑に移動しました。
うまく育っているところもあれば、これからの成長を待ちたいところもあります。うまく育っているところは、ポットに種を播いて、苗まで育ててから畑に植えた雑穀たちです。種まきした時期、苗を畑に植えた時期、両方とも天候に恵まれて、一番いいタイミングで作業できたからと信子さんはおっしゃいます。
とはいえ、直播きが悪いわけではなく、今回は暑い時期と長い梅雨が連続してきてしまっただけで、お天気さえ味方してくれれば、直播きでも十分よく育つそうです。これから秋までに適度に雨が降り、適度に日が照れば、十分収穫までいけるので心配いらないそうです。雑穀たちの成長を、信じて待ちたいと思いました。
さて、私の任された一列の高キビは直播きだったため、残念ながら今ひとつ背丈が伸びず、雑草のなかに埋もれていました。まだ穂すら出ていません。信子さんに相談すると、はっきりと成長の分かる奥の方から順番に見ていけば、等間隔で植えてあるからきっと高キビと雑穀が見分けられるはずとのこと。やっているうちに目がだんだんと慣れてくるそうです。できるかどうか自信がありませんでしたが、とにかくやってみることにしました。高キビの茎の色は赤です。それを頼りに風の草刈りをしていきます。
「雑草に負けて消えてしまったのでは」、「そもそも発芽しなかったのでは」と弱気な気持ちが胸をよぎります。でも、しっかりと成長した高キビの40センチとなりには、まだ弱弱しい感じのする赤い茎の高キビが、すっと立っているのがよく見ると分かりました。そしてその40センチとなりにまた赤い茎が。ちゃんと育っているのだと思うと感動でした。
高キビだけ残しながら、風の草刈りを進めていきます。天候に恵まれず、悪条件のなかでも、高キビは一生懸命に生きているのだと思いました。終わってみれば、一列しっかりそろって芽を出し、弱弱しさもありつつもしっかりと葉を伸ばして生きていました。雑穀の生命力の強さ、たくましさを感じた瞬間でした。
信子さんが面白いものがある、と言ってみんなを呼びました。
右が本物のアマランサス、左がアマランサスによく似た雑草です。よく見ないとどちらが本物か分かりません。信子さんは、穂の付き方、葉脈の流れ方が違うよ、とおっしゃいますが、よくここまで似たものだと思ってしまいます。雑草だと思って刈り取られないように真剣にアマランサスの真似をして生きています。
11時半になり、マイ畑のみなさんも大体の作業を終えたところで、信子さんの自宅に戻りランチの準備に入りました。ベジバーベキュー用のタレを作る班と野菜を切る班に分かれて作業します。
そして、切った野菜や厚揚げをタレに漬けておきます。キラキラと輝きを放つ野菜たちです。
暑いので、日陰になるテラス席にバーベキューセットを持ってきて、火をおこし、一人一人自分の分を焼きました。
暑い中、外で食べるバーベキューは格別のおいしさでした。食後は少し休んでから、畑に出ることになりました。暑さで体がダウンしないようにという信子さんのうれしい配慮です。
畑に出る前に作った即席しば漬けも、適度な酸味と塩味で汗をかいた体にしみわたるおいしさでした。
午後は下の畑で防鳥対策を教わりました。信子さんの畑では、黄色い糸を両端に刺してある目印の棒に巻いて固定します。防鳥対策というと、細かい網目のネットを雑穀の上に広げるイメージでしたが、黄色い糸を張るだけで、鳥たちは糸に羽が引っかかるのを恐れて来なくなるとのことでした。鳥も意外とあとさきを考えて動いているのだなあと意外な感じがしました。
雑穀の成長を見越して、雑穀よりも少し高い位置で黄色い糸を張り終えると、信子さんが、それぞれの雑穀の収穫の目安を教えてくれました。マイ畑のもちキビは、順調にいけばあと2週間で収穫ということでした。次回の雑穀栽培体験は一か月後なので、もちキビをマイ畑で育てている方はそれより前に来ないといけないことになります。参加者のみなさんも「えー、もう収穫!?」と驚かれていました。6月中旬に苗植えして9月上旬には収穫です。雑穀の成長の早さに驚かされます。
畑から戻ると、おやつが待っていました。桃の角切りを混ぜたつぶプルクリームです。暑い野外の作業から戻ったあとに食べるデザートは本当においしく感じます。
デザートのあとは、参加されたみなさんで感想をシェアしました。
「春から参加して、2週間後にはもちキビ収穫ということで早いなあと思います。一年のサイクルがだんだんと見えてきた。種まきから収穫までなんとなく流れが見えてきて感動しています。」
「風の草刈りは自分が風になるんだと思った。実際にやってみるとよく分かって楽しい」
「初めてやることばかりで全体像が見えていないが、分からない中でもやってみることが大切なんだと思った。苗植えのときには、みんな同じように見えていたが、ここまで育つと違いが見えてきて面白いと思った。」
「小さいときから見てきて、最後にこんなに立派な実をつけるんだと知って感動しています。やっぱり地球は大地の母なんだと思う」
雑穀の栽培を年間通じて体験することで、みなさんそれぞれに感じていることがあるようでした。こればかりは、実際に何度も畑に足を運ばないと分からないことです。雑穀栽培を自分でもやってみようと思う人が増えるといいなと思います。
次回は9月。いよいよ収穫が始まります。どの雑穀もたわわに実った、喜びいっぱいの収穫の秋が来るのを楽しみに、また小川町を訪れたいと思います。
未来食つぶつぶ 畑へおいで! 主宰 岩崎信子
文責:つぶつぶ雑穀料理教室あずさ 主宰 丸山あずさ
写真提供:つぶつぶ会員 一泉百葉さん
未来食つぶつぶ 畑へおいで!のレッスン一覧はこちら
https://tubutubu-cooking.jp/schools/detail/34 »
雑穀栽培をより詳しく知りたい方へ、本やDVDのご紹介
雑穀の育て方について、詳しくは、下記の書籍またはDVDを参考にしてください。
※ 雑穀のタネは、毎年4月中旬~5月いっぱいを目安に「未来食ショップ つぶつぶ」で販売しています。(農薬や化学肥料を使わずに栽培された在来種の種です。)