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未来食つぶつぶ 公式ブログ

アフリカの雑穀 〜サヘルの真珠、トウジンビエ〜

*この投稿は以前発刊していた会報誌『月刊つぶつぶ』より一部編集して掲載しています。

文:日本大学生物資源科学部教授/日本雑穀教会会長 倉内伸幸

憧れの地へ

1999年10月、パリからサハラ砂漠を越えニジェールの首都ニアメ空港へ向かって機体が徐々に高度を下げてゆく。古びた窓からみえる景色は一面黄土色の乾いた世界だった。何も無い。わずかに転々と畑らしきものと小さな小屋らしきものがみえるだけであった。しかし、私の心は踊っていた。遂に来た。憧れのサヘルへ。興奮を抑えながらタラップを降り、生暑い風を感じていた。

サヘル(Sahel)とは、アラビア語で岸辺を意味し、西アフリカのセネガルからスーダンにかけて帯状に広がるサハラ砂漠南緑部の半乾燥地域を指す。この地域は、降水量が年に500mm前後と少なく、さらに降水量の年次変動が激しいため、しばしば飢餓を引き起こすことがある。

遡ること10年前の1989年、大学院を終えた私は途上国の技術協力を志して青年海外協力隊を受験した。第一希望国は最貧国といわれるニジェールであった。しかし、派遣国はサハラ砂漠の北側に面するチュニジアに決まった。北アフリカ諸国は地中海に面しており、東地中海地域で起源したコムギ、オオムギが主たる栽培作物で主食はパンであった。

これも運命と受け入れ、三年間コムギ、オオムギの研究協力に励んだが、時折ナツメヤシの生い茂るサハラ砂漠のオアシスから夕日に向かって、「いつかこの砂漠を越えて西アフリカに行くんだ」と誓った。

帰国後、幸運にも大学で職を得てオオムギの基礎研究に没頭する日々が続き、ようやく研究が一段落ついた頃西アフリカで栽培作物調査の機会を得た。サヘルのど真ん中、ニジェールで一ヶ月間主食作物のトウジンビエ在来品種の収集と栽培技術の調査であった。

この調査をきっかけに今日までほぼ毎年西アフリカのニジェール、プルキナファソ、コートジボワール、セネガルおよび東アフリカのウガンダ、タンザニア、ザンビアで在来作物を調査した。日本ではほとんど知られていないアフリカの雑穀について紹介していく。

トウジンビエとは

アフリカで栽培されている雑穀(ミレット)はトウジンビエ、シコクビエ、フォニオ、テフである。このうち、トウジンビエはサハラ砂漠以南のほぼアフリカ全土、シコクビエはケニア、タンザニアを含む東アフリカ、フォニオはセネガルからチャドにかけてのサヘル南緑、テフはエチオピアで栽培されている。トウジンビエはアフリカで年間1000万t以上生産され、少なくとも5億人が主食としている。アフリカの中でも栽培がさかんな国は、西アフリカに位置するニジェールとナイジェリアである。

トウジンビエ(Pennisetum glaucum(L.)R. Br.)はイネ科、チカラシパ属の1年生作物で、西アフリカで紀元前に栽培化された雑穀の1つである(写真1)。成熟すると光沢のある穀粒が裸出して、真珠のような輝きを呈することから英語ではpearl milletと呼ばれている。栽培作物のなかで最も干ばつに強い作物といわれている。

西アフリカのサヘル気候帯からスーダン気候帯のような降水量が不安定で少なく、気温が高く、土壌肥沃度が低い場所ではイネはもちろん、トウモロコシなどの穀類は、経済的な収量を上げることができず生育すら困難である。このような気候帯でトウジンビエは、唯一の栽培可能な穀物であり、貧しい農村において主要なエネルギー資源になっている。

西アフリカに関する文献や資料をみていると、しばしばキビあるいはヒエと日本語に訳された作物が登場してくる。これは訳者の間違いで、ほとんどがトウジンビエのことである。このようにミレット(英語:millet、フランス語:mil)は多くのイネ科穀物を含んでいるため、誤って訳される場合が多い。アフリカではヒエ、キビ、アワはほとんど栽培されていない。

ミレットは西アフリカではトウジンビエを指し、東アフリカではトウジンビエとシコクビエを指す。西アフリカのサバンナ地域でトウジンビエは、マイナー作物ではなく主食作物なのである。フランスが旧宗主国だった西アフリカ諸国は共通通貨(CFA)があり、250CFA硬貨のデザインに採用されていることにも、この地域におけるトウジンビエの需要度が現れている。

日本をはじめとする先進諸国では存在すら知られていないトウジンビエだが、この作物を唯一の主食としている人々がいることを忘れてはならない。地球温暖化が進み、乾燥地が拡がっている現在、トウジンビエの重要性はますます高まるだろう。

トウジンビエの利用方法と栄養価

杵あるいは製粉機で製粉されたトウジンビエは、主食、副食として食べられる。主食としては、トー、バットあるいはクルパクルパと呼ばれるお練りの一種で、東アフリカでトウモロコシからつくるウガリと同様のものである(写真2・3)。

トーは少量の粉を水にといて火にかけ沸騰されて、そこへさらに粉を入れて木の杓子で練り上げる。これを洗面器状の容器にいれて、冷まして固まればできあがりである。これを一口大にちぎって汁につけて食べる。汁は、オクラ、バオバブの葉、スンバラ(タマリンドの発酵調味料)、野生のモロヘイヤの葉など粘りのでる植物からつくられる。副食としては、牛乳かヨーグルトにトウジンビエの湯がいたダンゴを溶かした飲み物(ドーヌ:写真4)や重湯のようなうす粥(コーコー)がある。食物以外にもトウジンビエは有用な植物資源である。茎葉は屋根葺き材料や垣根、燃料、家畜の飼料として重要である。

西アフリカの限界地帯に居住する人々の生命を支えているトウジンビエは、高い栄養価を有する(表1)。精白米と比較して、ビタミン、ミネラルとも豊富で野菜などの摂取が少なくても健康を維持できる理由がうかがえる。人々の生活を支えているトウジンビエは、家畜の飼料としても重要な作物であり、穀類の栄養価だけでなく茎葉の栄養価も軽視できない。サヘルに生きる生物すべてがトウジンビエに依存して生きているのである。

表1. トウジンビエの栄養価(100gあたり)と精白米との比較

出所:Lost Crops of Africa(1996)、七訂食品成分表(2018)

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