【塩の話 vol.5】自然海塩ならではのシンプルクッキング 〜素材のうまみを引き出し調和させる〜
*この投稿は以前発刊していた会報誌『月刊つぶつぶ』より特集シリーズ「海の結晶 本物の「自然海塩」を食卓に」から一部編集して掲載しています。連載一覧はこちら
穀物、野菜、海藻、塩という4大要素のひとつである塩は、他の食物と違い、カロリーはゼロ。車にたとえれば、食がガソリンならば塩はエンジンオイルに当たります。
おいしい料理の秘密は塩加減
海のミネラルの結晶である自然海塩で料理すると素材のうまみがどんどん引き出されるので、だしいらず、手間いらずのシンプルクッキングでたくさんのおいしい料理を作り出せます。
難しい調味料は何もいりません、旬の元気に満ちた食材さえ用意すれば、海の生命力を宿した自然海塩がすべてを演出してくれます。
こんなに簡単でいいのかしらと戸惑うくらいシンプルな調理法なのに、できた料理の深い味わいは満足度100%、驚くほど新鮮で多様な風味が楽しめます。野菜は皮をむかないで、おいしさ丸ごと楽しみましょう。
塩のきいたおいしい料理が体を元気にする
味覚って実は自分の体が望んでいる塩加減をキャッチする高度なセンサーだということをご存じでしょうか。実は私たちの体は自律神経をはじめ、全機能を「塩味」で調節しています。
体の中の塩分は常に消耗されているので、日々消耗されるミネラルを適切に補うために、人はみんな自分の体に必要な塩分濃度の食べ物をおいしいと感じる味覚を持って生まれてきます。
そのときの体調や気候にピッタリの塩加減の料理を食べたときにはじめて、細胞レベルに響く「おいしい!」という感覚を味わうことができるのです。
たとえば、激しい労働で体力を消耗したときや多量に汗をかいたときはミネラルもたくさん消耗するので、塩分の多い食べ物がおいしく感じられます。反対にあまり体を使わない仕事の人はミネラルの消耗も少ないので薄味を好みます。
寒い東日本と温暖な西日本では西日本の方が薄味好みなのは自然のバランスにかなっているのですね。体調に合った塩加減の料理を食べると、深い充足感とともに体の中のミネラルバランスが整って、免疫力も抵抗力も全開になります。
結構広いおいしい塩加減
料理に塩を入れていくと、あるとき急においしくなる境目があります。そしてもっと入れていくとしょっぱくて食べられなくなります。
おいしい範囲は、「塩がきいていておいしい」濃いめから「上品な塩味がうまみを引き立てるおいしさ」の薄めまで幅があります。その範囲のどこをおいしいと感じるかは体調や気候のシチュエーション、他の料理とのバランスによって微妙に変化します。ただし、この範囲より少ない塩分の場合、うまみが出ないので、動物性のだしや化学調味料がないとおいしい料理はできないと感じてしまいます。
この分量の穀物ならこれくらいの塩でおいしくなる、この野菜はこのくらいたっぷり塩を入れないと味が出ない、今日は寒いからこれくらいがみんな好きかな……。いつもしっかり観察して、目と舌で適塩調理の調味料感覚を体得しましょう。塩とおいしさの関係を経験し発見していくのは、驚きに満ちて楽しいものです。
このくらいの味なら、ここでこのくらいの塩を足すと決まるだろうと、入れてぴったり決まったときの満足感は格別です。塩加減さえ体得すれば、素材の組み合わせひとつで多様なおいしさを自由に生み出すことができます。
失敗を恐れずに、どのくらいでおいしさが飛び出すのか、どのくらいでしょっぱくなってしまうかを、料理のたびに思い切って実験しましょう。ただし、ちょっとずつ塩の量を増やしては味見をしていると舌がマヒしてしまい、いつになってもうまみやしょっぱさを感じなくなってしまうので要注意です。
塩の使い方
1. 目安は1%
小さじ(5cc)1の塩は5g、大さじ(15cc)1の塩は15g。500gの野菜に小さじ1の塩でうまみが引き出されます。
2. はじめに入れる
塩は有機物と結合することでおいしくなります。塩のミネラルが野菜などの有機成分と結合することで、生命力を高める微妙な甘さと風味が生まれ、おいしくて体にやさしい塩分になるのです。
例外:粉を煮てクリームを作るときと、小豆を煮るときは、煮えてから塩を加えます。
3. 焼き塩
塩を厚手の鍋でから煎りするとツーンとした刺激臭がします。それが消えるまで煎ってすり鉢で細かくすったものが焼き塩。卓上などでふりかけて使う塩は味わいも栄養的にも焼き塩がオススメ。
4. だし無しで料理してみる
本来の塩を使えば食材からうまみ成分が引き出されるので、だしが無くてもおいしくなります。
日本食用塩研究会
未来食アトリエ 編 著
メタ・プレーン 1,890円