【ベジタリアンを知る vol.23】ベジタリアン・ビーガン食品の表示を考える
*この投稿は以前発刊していた会報誌『月刊つぶつぶ』より連載シリーズ「ベジタリアンを知る」から一部編集して掲載しています。連載一覧はこちら
執筆:NPO法人日本ベジタリアン協会代表 歯学博士 垣本 充
ベジタリアンとは?
「ベジタリアンを知る」の連載当初、第2回のベジタリアンのタイプのところで、「ベジタリアンってどんな人?」「野菜を食べる人?」という問いかけをしました。
ベジタリアンという語は19世紀半ばに英国で起こった近代菜食主義運動の時代に造語された比較的新しい英単語です。その語源はラテン語のvegetus(ベゲトゥス、心身とも健康で生き生きしている)で、決してvegetable(野菜)から来ているのではありません。
その号で、ベジタリアンは学術的に、ビーガン(純菜食)、ラクト・ベジタリアン(乳菜食)、ラクト・オボ・ベジタリアン(乳卵菜食)、ぺスコ・ベジタリアン(魚乳卵菜食)、ポーヨー・ベジタリアン(鶏魚乳卵菜食)の5つに大別されることも述べました。
ベジタリアンの食品表示
このベジタリアンの食品表示について、今回は取り上げたいと思います。
ベジタリアン表示の国際的基準を考える上で、国際ベジタリアン連合(IVU)が定める先の分類の上位3タイプ、ビーガン、ラクト・ベジタリアン、ラクト・オボ・ベジタリアンをベジタリアンとします。他の2タイプはベジタリアンに準ずるタイプとして、今回の表示の対象から外します。
多様なベジタリアン食品が販売されている英国では、食品会社やスーパーなどが独自にベジタリアン食品、ビーガン食品の表示を行い、中には表示に不適切なものが見受けられ、消費者に混乱を与えました。このような「曖昧で不正確な表示」が社会問題化して、英国政府食品基準庁(FSA)は2006年に、英国ベジタリアン協会と英国ビーガン協会などと協議を重ね、ベジタリアン、ビーガンの適切な食品表示のためのガイダンスを作成しました。
英国ベジタリアン協会は、ベジタリアン食品表示の基準として、原材料や添加物に乳卵以外の動物性食品を使わないことが大前提です。畜肉、鶏肉、魚貝または骨のストック(だし)、動物性脂肪(油脂)、ゼラチン、アスピック(魚ゼリー)、ローヤルゼリーなどが含まれない、食品添加物についても動物性由来のものは使用しない、動物実験を行っていない、遺伝子組み換え作物(GMO)を使っていない、生産工程で他の非ベジタリアン食材に汚染(コンタミ)されないことなどが規定されています。これが、現在のベジタリアン食品表示の国際基準とされています。
2010年に欧州議会はベジタリアン、ビーガンという用語の使用に合法的な位置づけを与えることを採択しました。そして、これは猶予期間を経た2015年以降、ベジタリアンやビーガンという用語の誤用が見出される製造業者に対して公的訴訟を起こしうることを意味します。
ところが我が国では現在、このような曖昧で不正確な表示問題が蔓延しています。その一例として、ベジ〇〇と名称をつけた団体が、希望者に無審査でベジタリアンやビーガンマークを給付しています。聞くところによると問題が生じた場合、マークを表示した側の自己責任だということですが、製造者のベジタリアン食への理解度によって、GMOやコンタミなどを含む問題山積の不適切表示の危険性があり、消費者を全く無視したもので、ベジタリアン食品の国際的基準を理解していません。
NPO法人日本ベジタリアン協会は英国ベジタリアン協会の食品表示基準に倣った食品推奨制度を制定しています。そのJPVS推奨は日本ベジタリアン学会の理学、医学、農学、環境科学などの博士号を有する専門家によって審議、決定されます。
本協会は、農水省消費安全局表示規格課のヒアリングで英国のベジタリアン食品表示の情報を提供しています。2020年の東京五輪を迎えるにあたり、この不適切な表示に警鐘を鳴らさざるを得ない状況にあります。
次回は、JPVS推奨について詳しく述べたいと思います。
NPO法人 日本ベジタリアン協会
日本ベジタリアン協会は、1993年4月設立、2001年2月に特定非営利活動法人(NPO法人)の認証を受けた非営利団体です。「人と地球の健康を考える」をテーマに菜食とそれに関連した健康、栄養、倫理、生命の尊厳、アニマルライツ、地球環境保全、発展途上国の飢餓などの問題に関する啓発や奉仕を目的とし、菜食に関心のある人々に必要な知識や実践方法を広め、共有していくためのネットワークづくりを行なっています。
HP:http://www.jpvs.org/