【ベジタリアンを知る vol.32】欧米でビーガンが急増！？②－いまドイツ・ベルリンが熱い！－

＊この投稿は以前発刊していた会報誌『月刊つぶつぶ』より連載シリーズ「ベジタリアンを知る」から一部編集して掲載しています。連載一覧はこちら

執筆：NPO法人日本ベジタリアン協会代表 歯学博士 垣本 充

ドイツでは全人口の約半数が菜食志向

前回記事で、英国やイタリアでビーガンが急増しているというリポートを行いました。ところで、現在、欧米だけでなく世界的にベジタリアンやビーガンに注目されている国がドイツです。

ドイツのレストランやカフェには、必ずベジタリアン用のメニューが用意されていますし、ベジタリアン・ビーガン向けに特化したレストランもどんどん増えています。2010年を過ぎるあたりから世界的なベジタリアンの中心はロンドンからベルリンに移ったという専門家もいるほどです。

ドイツでは、年々ベジタリアンやビーガンが増えています。2015年に行われたJETRO等の調査によれば、総人口の11% がベジタリアンで、卵や乳製品を一切口にしないビーガンが約1.5%、さらに驚くのは週に1～2回しか畜肉を食べないフレキシタリアンと呼ばれる人たちが39％に上ると報告しています。このフレキシタリアンにベジタリアンやビーガンを加えると全人口の約半数が菜食志向の人たちだと言えるのです。

私は9年前の2008年にベルリンを訪れましたが、最近のベジ事情は書物やネットでは調べているのですが、その現状を知りたいと思っていました。そのような時、この2月から筑波大学人文社会学研究科に留学しているドイツ人の女性フレデリケ・ザレッツさんが、日本のベジタリアン調査の一環で協会へ取材のために来阪されました。この機会を捉えて彼女の取材に応えた後、ベルリンの現在の状況を尋ねてみました。幸いなことに、彼女はベルリンの大学に在学していたことがあり、種々の最新情報を得ることが出来ました。

ベルリンのベジタリアン事情

まずは、2011年にオープンしたビーガン専用スーパーマーケット「ビーガンズ」について聞いてみました。まず規模についてですが、2フロアあるような大型店は現在3店、その他の小型店はベルリン市内に数店あるようです。野菜や果物などの生鮮食品はオーガニックのものを販売。加工食品は植物性100％のビーガン対応のバーガー、ソーセージ、ミートボールなど多彩なチルド食品が取り揃えられています。

驚いたのは、スーパーというだけあって、食料品だけでなく、衣料品、化粧品、日用雑貨品などが販売されていることでした。「ビーガンズ」に来れば、ビーガンのライフスタイル全てを網羅する品物を購入できるのです。勿論、一般のスーパーやドラッグストアにもベジタリアン対応の食品や化粧品が販売されています。

ファーマシーと呼ばれる調剤薬局とは違い、ドラッグストアは、ベジタリアン・ビーガン用のサプリメントや食品を取り扱っています。特筆すべきなのは、ドラッグストアでは、ナチュラルコスメと呼ばれる植物性化粧品が人気のようです。なかでも「ｄｍ」（ドロゲリエ・マルクト）はベルリンだけでなく、ドイツ中に店舗展開する人気のドラッグストアです。「ｄｍ」オリジナルの商品にはBDIH(ドイツ化粧品医薬品商工企業連盟)の厳しい基準をクリアしたオーガニック商品の証明が付与されています。化粧品のほか、シャンプーやリンス、ボディ－ソープなどが揃っていて、女性用だけでなく、ベビー用、男性用のオーガニック製品も多数あるのが特徴です。

このように、ドイツでビーガンが急増している背景は、ドイツ政府の脱原子力と再生可能エネルギー推進を軸とするエネルギー転換政策にあると思われます。しかも、これはエネルギー政策上の選択肢だけではなく、地球温暖化防止などの環境保全や国民の健康で安全な生活維持など、広範囲な分野を対象とするドイツの持続可能な国づくりの思想が若い人たちに影響を与えていて、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーの活用とともに、食品や化粧品、日用雑貨品の分野にも、この思想が浸透しているのではではないかと、環境への高い関心を示すザレッツさんへのインタビュー通して感じました。

NPO法人 日本ベジタリアン協会
日本ベジタリアン協会は、1993年4月設立、2001年2月に特定非営利活動法人（NPO法人）の認証を受けた非営利団体です。「人と地球の健康を考える」をテーマに菜食とそれに関連した健康、栄養、倫理、生命の尊厳、アニマルライツ、地球環境保全、発展途上国の飢餓などの問題に関する啓発や奉仕を目的とし、菜食に関心のある人々に必要な知識や実践方法を広め、共有していくためのネットワークづくりを行なっています。
HP：http://www.jpvs.org/