ひえ(稗)の栽培方法① 畑の準備〜種まき・育苗〜間引き・草取り・土寄せ
前回の「あわ」に続いて、今回は「ひえ」の畑の準備〜種まき・育苗〜間引き・草取り・土寄せまでをご紹介します。ひえの栽培方法について、その他の記事は下記をご参照ください。
ひえの栽培方法② 出穂(しゅっすい)と開花、鳥害・害虫・病気の対策、収穫と乾燥 »
ひえの栽培方法③ 脱穀・調整 »
ひえって、どんな雑穀?
ヒエには、インドが起源のインドヒエと、日本を起源とするニホンヒエの2系統があります。
ニホンヒエは、野生のヒエを日本で栽培化したもので、縄文中期の三内丸山遺跡(青森県)から、当時すでに大量のイヌビエを栽培していたことが推測されています。また、先住アイヌ民族は、ヒエを「ピヤパ」と呼び、お粥などにして食べていました。彼らの間では、ヒエは祖先神が直接もたらした聖なる穀物という説話が語り伝えられています。
その後、日本人の重要な主食として食べ継がれ、昭和30年代までは多くの山間地でヒエが食べられてきました。その理由は、寒冷地ではイネを栽培しても冷害の危険が高かったことと、山間地は、田んぼの圃場(ほじょう)整備が進まず、水田面積が少なかったためです。
ひえについて詳しく知りたい方はこちらのページをご覧ください。
ひえ(稗)とは? ひえの栄養、効能など »
栽培の特性
ひえはもともとは温帯性の作物ですが、環境適応力が高く、雑穀の中でも、特に寒さに強いです。「ヒエ」の語源は「冷え」からきているという説もあるほどです。そのため、古くから東北地方や北海道で栽培が盛んでした。また、土壌の乾湿への適応範囲も広く、水田でも畑でも栽培できます。
このように、さまざまな土壌によく順応し、広く根を張ることができるため、吸肥力も旺盛で、痩せた土地でも育ちます。そのため、逆に肥料のやりすぎは倒伏を招きやすく、土壌の栄養管理に注意が必要な、デリケートな作物であるとも言えます。
ヒエの育てかたと手順
1. 畑の準備(肥料の準備と畝(うね)づくり)
ヒエを栽培する畑を耕起(こうき=土起こし)し、種をまく位置(列)に深さ10センチの溝を掘り、完熟の有機質肥料またはボカシ肥料を入れます。米ぬかや油かすなど一般有機肥料を使用した場合は、1週間ほどおいてから種をまきます。施す肥料の量は、他の雑穀よりは少なめに。(もともとその土がどれくらいの栄養分を持っているかにより加減します。)前作(ぜんさく)の肥料分がかなり残っている場合、たとえば、ナスや大豆などの後作(あとさく)にヒエをまくのであれば、肥料は必要ありません。
肥料を投入したら、掘り起こした土を戻して、平らにならします。列と列の間隔は60〜90センチ程度。まっすぐ種まきができるよう、両端に棒を立て、糸を張ります。
2-1. 種を畑に直接まく方法
畑に直接種をまく、直播(じかまき)の方法をお伝えします。
1アール当たり100〜120ccの種を準備し、種まきは5月中旬頃を目安に行います。ヒエは覆土をしなくても発芽しますが、3センチくらいの深さまでは生育によいでしょう。
張った糸にそって、土に深さ1センチの穴をあけ、ヒエの種を4〜5粒ずつ落としていきます。ヒエは分けつが多く、1本が6〜8本に増えるので、株間はやや広めの20センチにします。種をまいたら土をかけ、手または足で軽く踏んでおさえます。
ヒエは背丈が通常160〜180センチになります。ただし、ヒエの出穂は、日長と気温の影響を強く受けるため、時期はほぼ一定です。つまり、遅く種をまくと、背丈が低くても出穂し、実が入ってしまうということです。この特徴を利用し、わざと種まきを遅らせることで生長を抑え、刈り取りの効率アップや倒伏を防いで土の混入を減らす効果が望めます。
2-2. 苗を育ててから畑に植えつける方法
セルトレイという、小さい穴がたくさん並んだ育苗(いくびょう)パネルに種まきし、ある程度の大きさの苗に育ててから畑に植えつける方法もあります。
雑穀は畑土に合う作物ですので、中・大規模栽培の場合は直播で十分ですが、育苗して畑に植え付ける方法も有効です。資材や育苗のためのスペースを用意する、水やりが毎日必要など、手間はかかりますが、生育がそろう、植え付け後の活着(かっちゃく=植物が新しい環境に慣れて新しい根が出ること)が良い、草取りが1回省略できるなどのメリットがあります。
(育苗のやり方は、下記書籍のP.15〜18に写真付きで詳しく紹介しています)
3. 間引き・草取り・土寄せ
種まきから2〜3週間し、10センチほどになったら、間引きをして、1株3本にそろえます。発芽後の生育が思わしくない、小さくて弱いものを引き抜きます。
株のまわりの土を片方の手で押さえ、間引く苗の根元を指ではさみ、地面に水平に引っ張ります。セルトレイで育苗する場合は、根元からハサミで切ります。
直播の場合は、雑草との混同を防ぐためにも、間引きまでの間に1回は除草して起きたいものです。間引き後3回は除草が必要になるので、合計4回行うことになります。育苗したものを植え付ける場合は、植え付け後に3回と考えてください。
まず、背丈が20センチくらいになったら、周囲の草を手で抜き取るか、草かきで削り取ります。続いて背丈が30〜40センチになったら、列(畝)の間を管理機や平鍬で耕し、その土を株元に寄せます。これを「中耕・培土(ちゅうこう・ばいど)」といいます。高さが50〜60センチになったら、もう一度中耕・培土します。株間の草を、手または草かきで取ります。
雑穀栽培をより詳しく知りたい方へ、本やDVDのご紹介
雑穀の育て方について、詳しくは、下記の書籍またはDVDを参考にしてください。
※ 雑穀のタネは、毎年4月中旬〜5月いっぱいを目安に「未来食ショップ つぶつぶ」で販売しています。(農薬や化学肥料を使わずに栽培された在来種の種です。)