【ベジタリアンを知る vol.4】菜食の生活習慣病予防効果① −ガン−
*この投稿は以前発刊していた会報誌『月刊つぶつぶ』より連載シリーズ「ベジタリアンを知る」から一部編集して掲載しています。連載一覧はこちら
執筆:NPO法人日本ベジタリアン協会代表 歯学博士 垣本 充
日本人の死因第1位ガンと菜食の関係
厚生労働省人口動態統計(2013年)によれば、日本人の死因第1位はガンで28.8%、第2位は心筋梗塞など(心疾患)15.5%、以下、肺炎9.7%、脳卒中など(脳血管疾患)9.3%と続きます。菜食が生活習慣病を予防する医学的なデータは数多くあります。ここでは、まず、死因第1位のガンと菜食の関係について解説したいと思います。
ガン学者ワインダー博士によれば、発ガンに関係する要因の約80%は環境的因子で、これらのうち、食生活の占める割合が最も多く、男性で40%以上、女性では60%以上に達するとされています。
ベジタリアンに関する予防医学的研究は米国の専門学術誌に多数掲載されています。まず、約2万5千人のベジタリアンを対象に21年間にわたり種々の病気の死亡率を調査したロマリンダ大学の研究を紹介します。これによれば、肺ガン、大腸ガン、乳ガン、前立腺ガンなど全てのガン死亡率で、ベジタリアンは普通食の人よりも低い値を示しました。とりわけ、肺ガンでは50%以下、大腸ガンでは60%以下の死亡率でした。
WHO国際ガン研究機関、国連食糧農業機構(FAO)、米国立ガン研究所などに所属する120人以上の研究者が世界各国4500以上の研究データを分析した「米国ガン研究財団の報告書」の全14条からなる「ガン予防ガイドライン」の第1条には「主として植物性の食事、すなわち多様な野菜と果実、豆類、ほとんど加工していないデンプンを主成分とした食物を選択すること」が表記されています。
我が国の例として、国立ガン研究センターの平山雄博士による、40歳以上の日本人約26万人を対象とした17年にわたる追跡調査によれば、喫煙、飲酒、肉食を毎日はぜずに、緑黄色野菜を毎日摂る人たちは、逆の生活習慣の人に比べると、ガンになる危険率が、喉頭ガン、食道ガン、肺ガンでは20%以下、胃ガン、肝臓ガンなど全てのガンでは50%以下の値でした。
厚生労働省が制定した「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」で、ガン予防に関しては、緑黄色野菜摂取の増加、動物性脂肪摂取の抑制を促し、一日の食事において果実を摂取しているものを29.3%から60%以上に増加させるなど、新鮮な(淡色)野菜、緑黄色野菜、果実を毎日摂取することが望ましいとしています。
菜食がガン予防に有効な理由
これらの日米の研究は調査法や対象者などに違いがありますが、共に菜食がガン予防に有効であることを示しています。その理由として、ベジタリアンが多く摂取する野菜や果実に含まれるベータカロテンやリコピンなどのファイトケミカル (化学的総称ポリフェノール)の働きが注目されています。
ファイトケミカルは発ガンや老化に関係する体内活性酸素の働きを抑える抗酸化作用を有し、これが肺ガンを始め、各種ガンを予防すると考えられています。大腸ガン関しては、ベジタリアンが食物繊維を多く摂取していることに起因すると思われます。野菜や豆、穀類に含まれる食物繊維は腸ぜん動を助けるなど、腸内に停滞した発ガン物質の排出を促します。
このように、菜食のガン予防効果は、数々の研究によって医学的に異論の無いものになっています。
次回は、菜食が示す心筋梗塞や脳卒中などの予防効果を、高脂血症や動脈硬化症と関連させて説明を加えたいと思います。
NPO法人 日本ベジタリアン協会
日本ベジタリアン協会は、1993年4月設立、2001年2月に特定非営利活動法人(NPO法人)の認証を受けた非営利団体です。「人と地球の健康を考える」をテーマに菜食とそれに関連した健康、栄養、倫理、生命の尊厳、アニマルライツ、地球環境保全、発展途上国の飢餓などの問題に関する啓発や奉仕を目的とし、菜食に関心のある人々に必要な知識や実践方法を広め、共有していくためのネットワークづくりを行なっています。
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