【ベジタリアンを知る vol.3】日本の菜食 −つぶつぶ菜食は究極のビーガン食−
*この投稿は以前発刊していた会報誌『月刊つぶつぶ』より連載シリーズ「ベジタリアンを知る」から一部編集して掲載しています。連載一覧はこちら
執筆:NPO法人日本ベジタリアン協会代表 歯学博士 垣本 充
日本の菜食
日本の菜食は6世紀半ばに伝来した仏教に由来しています。その教義である殺生禁断の思想が広まり、675年に天武天皇が「肉食禁止令」を発布して獣鳥肉類を食べることを禁じました。その後、13世紀、曹洞宗の開祖・道元は宋に留学して中国禅学を習得し、精神修養の手段として菜食に基づく食生活、すなわち、精進料理を確立しました。
植物性食品のみを使用する精進料理は季節感を大切にし、五法(生、煮る、揚げる、焼く、蒸すの料理法)、五味(醤油、酢、塩、砂糖、辛の味)、五色(赤、青、黒、黄、白)の組み合わせを厳しく教えています。このような教えは和食(日本料理)の調理法に大きな影響を与えました。このような仏教食が、我が国における菜食の原点だと云えます。
時が流れ、医師・石塚左玄は明治時代に食養会をつくり玄米菜食の普及活動を始めました。彼は「ナトリウムとカリウムとのバランスの崩れが病気を発症させる」とする陰陽調和を唱えました。食養会に参加し、この理論を受け継いだのが桜沢如一で、彼は易経の陰陽に当てはめた論理を提唱し、これが正食、マクロビオティックへと受け継がれて行きます。ただし、英国ベジタリアン協会で受講したセミナーでは、これらは少量の魚を食べることもあり、ベジタリアンに似た食生活の例として提示されていました。
西洋の菜食
つづいて、西洋型(乳卵)菜食を紹介したいと思います。19世紀の英国で起こった近代菜食運動の中心メンバーはマンチェスター教会のキリスト教信者で、このような流れが米国に伝わり、19世紀後半にはニューヨークにベジタリアン協会が設立され、同時代にセブンスデー・アドベンチスト教団の信者たちも菜食運動を展開しました。このような欧米で主流とされる乳卵菜食は第2次世界大戦後、我が国の菜食に大きな影響を与えました。
私は、研究を通してベジタリアンになった稀有?な例ですが、食物繊維に関する博士論文を執筆していた1980年代に、参考文献として米国栄養学会誌や臨床栄養学会誌をチェックしていると、毎号のようにベジタリアンを対象とした医学・栄養学の研究論文が紹介されていました。その内容は、主にガンや心筋梗塞など、菜食の生活習慣病予防効果に関するもので学術的な興味を持ちました。
1988年にミネソタ大学で開催された国際会議で研究発表するために渡米した折、菜食の医学・栄養学分野で最先端の研究を行うロマリンダ大学を訪れて研究交流を行い、菜食研究のスタート切りました。その後、自らベジタリアンとなり、1993年に日本ベジタリン協会(JPVS) を設立し市民運動を始める傍ら、研究者として、英国、米国、タイ、ブラジルなどで開催された世界ベジタリアン会議で講演を行いました。
つぶつぶ菜食との出会い
私が「つぶつぶ菜食」(雑穀菜食)を知ったのは、東京在住の理事の紹介で上京時に「ボナつぶつぶ」などのベジタリアンレストランで食事したことがきっかけです。その際、グランマ・ゆみこさんが主宰される「つぶつぶ未来食セミナー」の存在を知り、昨年、京都でSCENE1を受講する機会を得ました。セミナーは講義が主体で、昼食や夕食などの交流も含めて11時間半に及びました。内容は心身の健康や地球環境保全など多岐にわたり、JPVSの提唱する「人と地球の健康を考える」との共通点が多いことに気付きました。
ゆみこさんが「心と体を健康にする」を目標に、日本食のルーツや世界の先住民の食、マクロビオティック、生命科学など多分野の研究などを通して創作された「つぶつぶ菜食」は、予防医学や環境科学などのグローバル・スタンダードに適合した究極のビーガン食(純菜食)だと実感しました。
(歴史上の人物敬称略)
NPO法人 日本ベジタリアン協会
日本ベジタリアン協会は、1993年4月設立、2001年2月に特定非営利活動法人(NPO法人)の認証を受けた非営利団体です。「人と地球の健康を考える」をテーマに菜食とそれに関連した健康、栄養、倫理、生命の尊厳、アニマルライツ、地球環境保全、発展途上国の飢餓などの問題に関する啓発や奉仕を目的とし、菜食に関心のある人々に必要な知識や実践方法を広め、共有していくためのネットワークづくりを行なっています。
HP:http://www.jpvs.org/