雑穀の里・岩手県岩泉町の暮らし③ 雑穀の葉や茎もフル活用!雑穀の里に残る大きな釜、やだ釜
岩手県岩泉町は、雑穀が当たり前の暮らしが日本で一番長く、昭和40年代後半まで続いていました。そんな岩泉町で生まれ育ったのがつぶつぶ料理コーチ/つぶつぶマザーの佐々木眞知子さん。
古くから雑穀を栽培し食べてきた岩手県岩泉町の暮らし、雑穀文化の源流について連載でレポートしています。
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佐々木眞知子さん
つぶつぶ料理コーチ
つぶつぶマザー
牛のエサを煮た、やだ釜
レポートの②で、豆腐作りに使う「やだ釜」のことを紹介しました。やだ釜は、かつては岩泉地方ではどの家にもあったという、牛のエサを煮る大きな釜です。土間に石と土を塗り固めたかまどを築き、下の方から薪で火を焚くという仕組みです。
「やだ」とは、作物の殻や屑のことです。「山で刈った草、雑穀ヒエの殻とか麦の殻、くず豆や大根の葉っぱとか、それを全部切ってね、下から薪をくべて沸かして煮たの。」と夫の幸男さん。牛を飼っている家では、冬の間、毎日これを炊き、味噌やふすま(麦のヌカ)をかけて牛に食べさせていたそうです。
ちなみに、岩泉町は岩手県内で最も酪農の歴史が古く、明治時代から行っており、眞知子さんの家で飼っていたのも乳牛でした。ただし、牛乳はあくまでも収入を得るための商品で、家で飲む習慣はなかったとのこと。
山を切り開いてつくった広大な採草地と雑穀畑、というのが当時の岩泉の風景だったのです。
雑穀の葉や茎もフル活用
雑穀は、米などに比べて葉や茎の部分が多く採れます。身の部分は人が食べ、葉や茎の部分は家畜の飼料としてフル活用していたんですね。また、味噌を牛に食べさせるというのも面白いと思いました。特にお産の時には必ず味噌汁を飲ませるのだそうです。
「やだ釜を焚いているときは、独特のにおいがしましたね。」と眞知子さん。草の青臭いようなにおいだそうです。
そして、やだ釜に水を溜めるのは子どもの仕事でした。そばにある手押しポンプで井戸水をくみ上げ、ホースでやだ釜に水を溜めます。小さい頃はとても大変な作業だったといいます。
ワクワクして遊び働いた子ども時代
眞知子さんが小さかった頃は、それ以外にも暮らしの中に子どもの仕事がたくさんありました。牛を飼っていたので、みな朝早くから働いていました。でも、不思議とつらいとか大変という記憶はなく、楽しかった思い出ばかりなのだそうです。
その1つが、月明かりの下での畑仕事。「夜、満月のときはけっこう明るいですよね。畑仕事を親がするんですよ。普段ないことだから子ども心にワクワクしたのを覚えています。」
夕ご飯を食べたあと、ヒエ島(収穫した雑穀ヒエの束をまとめて結わえて畑に立てて乾燥させたもの)を小屋に運んだり、脱穀や調整をするのは、夜の作業でした。畑でかくれんぼをしたり、ヒエ島の下からネズミの家族を見つけると、宝物を見つけたように嬉しかったといいます。
炭焼きの手伝いもしたそうです。炭にする木をおじいさんと一緒に窯に入れたり、窯に火を入れてからは時々見に行って、どんな煙が出ているかを伝えるのも子どもの大事な役目でした。炭窯から上がる煙が白いと「まだ」とか、透き通ってくれば「もうそろそろ出来上がり」と、煙を見れば炭の焼け具合が分かるのだそうです。
眞知子さんの話から、子どもも立派な働き手であったこと、そして、子どもにとってはすべてが遊びで、仕事を任されて役に立つ誇らしさや、毎日の暮らしや面白い発見の中にワクワク感があったことが伝わってきました。
東北地方では、雑穀からかつての貧しさや労働の大変さを連想するお年寄りも少なくないですが、子ども達はいつの時代も無邪気な心でその場を楽しんでいたのではないかと思います。
連載で、雑穀文化の源流の暮らしについて、レポートしていきます。その他の記事はこちらから
雑穀の里・岩手県岩泉町の暮らし
① 白米ごはんを食べたのは盆と正月くらいだった!
② 外は天然の冷凍庫!厳寒を利用した凍み大根と凍み豆腐づくり
③ 雑穀の葉や茎もフル活用!雑穀の里に残る大きな釜、やだ釜
④ 山焼きと山菜~大地の生命力をいただく暮らしと食卓
佐々木眞知子さんの未来食つぶつぶ歴
2002年…つぶつぶ創始者ゆみこ岩泉町イベント開催時のスタッフ参加
2006年…サバイバルセミナー(現・未来食セミナーScene1&3)受講
2011年…未来食セミナーScene2受講
2014年…つぶつぶマザー養成講座受講
2015年…岩手県盛岡市でつぶつぶ料理教室開始
2016年…つぶつぶマザーとして未来食セミナー講師デビュー
岩手県盛岡市で未来食セミナーScene1開催
2017年…雑穀研究会「穂待ちっ娘」定期開催スタート
2018年…岩手県岩泉町で未来食セミナーScene1開催
<佐々木眞知子さんのブログ>
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