【油の話 vol.8】伝統製法の油ができるまで 〜石臼式玉しぼり油〜
*この投稿は以前発刊していた会報誌『月刊つぶつぶ』より特集シリーズ「特集 油 〜健康を支える油、健康を損なう油〜」から一部編集して掲載しています。連載一覧はこちら
日本各地には、現代の工業化に負けず、厳選した材料を昔ながらの安全な製造法で搾った、風味豊かなおいしい油を作っているメーカーが残っています。健康を支える油の作り方と、現代の油の製造法の違いを知り、良心的なメーカーのおいしい油を食べて、健康な食卓を取り戻しましょう。
九州鹿児島で伝統製法にこだわり続ける鹿北製油の製油工程を紹介します。
鹿北製油の製油工程
はじめに、刈り取ったゴマを唐箕(とうみ:米や麦などの穀物から籾殻(もみがら)やごみなどを風を吹き付けてより分ける農具)にかけ、ゴミや未熟胡麻を飛ばして選別し、水洗いした後、天日乾燥させます。石油系燃料での乾燥は短時間で済みますが、天日なので2〜3日かけてじっくり乾かします。
次に釜で煎ります。焙煎の温度と時間の加減で、油の色や味、搾油量などが左右されます。香気が飛ばないように100°Cの低い温度でゆっくり50分ほどかけて煎り上げます。
黒ゴマは焦げやすいので、焙煎も重油ではなく廃材を利用した薪を使います。薪の方が熱がやわらかく当たるため、ゴマの苦みが出ずに、甘さが引き出せるそうです。
煎ったゴマはローラーですりゴマの状態にします。ゴマの分子を壊すのが目的です。その後、木桶のセイロに入れて蒸気をかけ、握った時しっとりする程度まで蒸します。蒸すことによって、水分と熱で油が搾りやすくなります。
いよいよ搾油です。明治5年製の石臼式圧搾機に、綿布でくるんだゴマをかけ、じんわり石の重みで搾ります。復活した「玉じめ法」 です。
一般的な圧搾法は、高圧力で一気に搾るため摩擦熱による焦げ味や色がでますが、この「玉じめ法」は低圧力で時間をかけて搾るので圧搾熱による油の変質がありません。
搾油後、1週間静置し、不純物などを沈殿させ、上澄みのきれいな油だけを手漉き和紙でろ過します。ろ過には3日をかけます。
最後にビンに1本1本手詰めし ます。
鹿北製油ホームページ
https://www.kahokuseiyu.co.jp/
(取材・文/門馬飛鳥)