【ベジタリアンを知る vol.26】砂糖に含まれる果糖(フルクトース)が 老化・肥満・糖尿病におよぼす悪影響
*この投稿は以前発刊していた会報誌『月刊つぶつぶ』より連載シリーズ「ベジタリアンを知る」から一部編集して掲載しています。連載一覧はこちら
執筆:NPO法人日本ベジタリアン協会代表 歯学博士 垣本 充
ショ糖に含まれる果糖と老化の関係
前回、砂糖の主成分はショ糖(スクロース)で、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)が結合した二糖類だと解説しました。炭水化物として、糖類は単糖類、少糖類、多糖類に分類されます。単糖類はブドウ糖や果糖など、少糖類は単糖が2~10個程度結合したものでショ糖もそのグループです。多糖類は、デンプンやセルロースなどで、単糖が多数結合したもので多いものだと数万個もの結合がみられます。
砂糖といろいろな生活習慣病との関係を解説する前に、ショ糖に含まれる果糖と老化の関係について取り上げたいと思います。
砂糖は約99%がショ糖で構成されています。このショ糖を構成する果糖が私たちの健康をむしばむと、最近の医学・栄養学で指摘されています。
果糖は血糖値をすぐに上昇させないので、一昔前までは大量の果糖を食べても大丈夫と言われていたのですが、その安全神話はもろくも崩れ去りました。
最近、老化に関係するメカニズムとして糖化が話題となっています。糖化とは糖がタンパク質に結合し、身体の機能を低下させる老化現象です。その時、産生するAGEs(終末糖化産物)の毒性が細胞を傷つけ、老化を早める原因物質とされています。
果糖はこの糖化を促進させやすい傾向があります。ご飯の主成分はブドウ糖が多数結合した多糖類のデンプンですが、果糖の糖化作用はブドウ糖の約10倍とされています。なぜなら、果糖は肝臓でグリセロアルデヒドという物質に変換されます。このグリセロアルデヒドは非常に毒性の強いAGEsを中間体として作り出します。このAGEsは大量の活性酸素を生み出し、老化を促進してガンの発症にも関係するのです
米国では1960年代から砂糖や動物性脂肪の摂取過剰が問題とされてきました。それを受けて、1977年に米国上院栄養特別委員会によって「食事目標」が設定され、これが日本人の食事(厚生労働省国民栄養調査)と近似していることから、わが国でも話題になりました。
その食事目標には、脂肪からの摂取エネルギーのうち、動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸からの摂取エネルギーを16%から10%に、砂糖からの摂取エネルギーを24%から15%に減らすことが書かれています。
2003年のWHO(世界保健機関)とFAO( 国連食料農業機関)のリポートでも、砂糖は総摂取エネルギー必要量の10%未満にすべきだと、砂糖の過食に警告を発しています。
砂糖に含まれる果糖と、肥満や糖尿病病の関係
それでは、砂糖に含まれる果糖と、肥満や糖尿病病の関係を解説してみましょう。
糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンの不足によって血糖値が高くなる病気です。代謝の段階で果糖は肝臓で早急に脂肪合成されやすい性質を持っていて、そのため、太りやすい糖だと言われます。
脂肪の付き過ぎは、糖尿病と深い関係を持っています。脂肪から、インスリンの働きを邪魔する物質が放出されているため、身体は常に血糖値が下がりにくい状態になります。太ることで、高血糖が持続する体質になってしまうのです。
さらに肥満が進めば、インスリンを分泌している膵臓にも、余分な脂肪が内臓脂肪として付き始めます。その内臓脂肪が膵臓の働きを妨害してしまい、インスリンの分泌能力が弱くなってしまうのです。すなわち、脂肪の付きやすさが、糖尿病を引き起こす原因の一つと言えるのです。
血糖値の高い状態が続くことは、血管にとって大変な悪影響を与えることになります。糖尿病の合併症は、毛細血管を中心に生じる細小血管障害として、糖尿病網膜症や糖尿病腎症が知られています。
飽食の時代である現代、失明や腎不全を引き起こす糖尿病の原因として、砂糖のとり過ぎに警告を発せざるを得ない状況です。
NPO法人 日本ベジタリアン協会
日本ベジタリアン協会は、1993年4月設立、2001年2月に特定非営利活動法人(NPO法人)の認証を受けた非営利団体です。「人と地球の健康を考える」をテーマに菜食とそれに関連した健康、栄養、倫理、生命の尊厳、アニマルライツ、地球環境保全、発展途上国の飢餓などの問題に関する啓発や奉仕を目的とし、菜食に関心のある人々に必要な知識や実践方法を広め、共有していくためのネットワークづくりを行なっています。
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