【ベジタリアンを知る vol.10】日米で「つぶつぶ」食材が大注目！

＊この投稿は以前発刊していた会報誌『月刊つぶつぶ』より連載シリーズ「ベジタリアンを知る」から一部編集して掲載しています。連載一覧はこちら

執筆：NPO法人日本ベジタリアン協会代表 歯学博士 垣本 充

米国で最も注目されている食材「つぶつぶ」

前回記事で既述しましたが、雑穀は、稗、粟、キビなどイネ科作物の頴果(えいか：イネ科植物に見られる果実)のほか、菽穀(しゅくこく)の豆類、擬穀(ぎこく)の蕎麦、アマランサス、キノア、また、種実(ナッツ)類の胡麻などを指すと言われます。

これらを「つぶつぶ」と総称された、フゥ未来生活研究所による、このネーミングは、シンプルで愛らしい名称だと思いました。そして今、米国で最も注目されている食材がこの「つぶつぶ」なのです。

アメリカでは日本のように雑穀を食べる習慣は残っていませんし、稗、粟などの雑穀を一般のスーパーマーケットで見かけることはありません。しかし、ネイティブ・アメリカンが常食とした種実(ナッツ)類のピーカンナッツや、南米アンデスのインディオがミラクル・フードと呼ぶ雑穀のキノア(キヌア)が宇宙食として米国航空宇宙局(NASA)より評価を受けたことが話題になりました。

そのナッツなどの粒状の食材が医学的に大きな注目を浴びています。米国でナッツが心筋梗塞などの虚血性心臓病の予防効果を有すると話題になっているのです。

ナッツがベジタリアン医学上、注目されるきっかけとなったのは、2010年の米国医師会雑誌(JAMA)に紹介された研究でした。血中のコレステロール値や中性脂肪値が増加する高脂血症患者約583人を対象に、ナッツ類の血中脂質への影響を調査した25の臨床試験を統計的にまとめたものですが、ナッツの摂取量の多い人ほど、LDL(悪玉)コレステロール値や中性脂肪値が減少する傾向を示しました。

また、ナッツを多く摂取することにより、心筋梗塞のリスクが30～50％も低下するデータも発表されています。

ナッツ類に含まれる多くの脂質は不飽和脂肪酸です。また、ビタミンEの最も良い自然の供給源であり、食物繊維やカリウム、マグネシウムなどを多く含んでいます。ナッツに多く含まれる不飽和脂肪酸のリノール酸は血中のLDL(悪玉)コレステロール値を低下させ、α−リノレン酸は動脈硬化を予防することが、心筋梗塞の発症を低下させるのです。

そこで、ナッツと雑穀100ｇに含まれるリノール酸(L)とα−リノレン酸(αL)の量(ｇ)を五訂増補日本食品標準成分表・脂肪酸成分表編(2010年)で調べてみました。ナッツ類の代表として、クルミ(L:61.3、αL:13.3)、アーモンド(L:24.4、αL:Tr＊)、カシューナッツ(L:17.5、αL:0.2)の数値をあげてみました。

一方、雑穀では、アマランサス(L:43.1、αL:0.8)、大豆(L:51.8、αL:10.7)、胡麻(L:,45.6、αL:0.3)でした。これらを比較すると、ナッツと雑穀はともに多くのリノール酸を含み、中でも、クルミと大豆はα−リノレン酸も多く含んでいます。稗、粟、キビ、アマランサスはこの脂肪酸成分表編には掲載されていませんでしたが、これは成分の問題ではなく、消費量の問題と推測されます。これらの数値から、雑穀はナッツ類と同様、動脈硬化を予防して心筋梗塞などの虚血性心臓病の予防効果を有すると考えられます。

健康的な食事プレートを発信するハーバード大学公衆衛生大学院によれば、現代食に警鐘を鳴らす目的で、｢果物、野菜、全粒穀物、ナッツなどを摂取して、畜肉や不健康な脂を避けることが大切である｣とアドバイスしています。

紀元前の縄文時代から食べていたとされる雑穀、古代エジプトの時代から貴重な食料とされたナッツなどの粒状の食材が時を超えて日米で再評価されているのは大変興味深い現象です。

「未来食つぶつぶ」が究極のビーガン食と呼ばれる理由には、前号で紹介したカリウムなどのミネラルの生理的作用に加えて、雑穀に多く含まれる良質の植物油特有の不飽和脂肪酸の存在も見逃せないのです。

註：＊Tr(トレース)は最小記載量の1/10以上含まれているが5/10未満の痕跡微量。

NPO法人 日本ベジタリアン協会
日本ベジタリアン協会は、1993年4月設立、2001年2月に特定非営利活動法人（NPO法人）の認証を受けた非営利団体です。「人と地球の健康を考える」をテーマに菜食とそれに関連した健康、栄養、倫理、生命の尊厳、アニマルライツ、地球環境保全、発展途上国の飢餓などの問題に関する啓発や奉仕を目的とし、菜食に関心のある人々に必要な知識や実践方法を広め、共有していくためのネットワークづくりを行なっています。
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