【ベジタリアンを知る vol.7】菜食と環境 −地球温暖化とミートフリー・マンデー−
*この投稿は以前発刊していた会報誌『月刊つぶつぶ』より連載シリーズ「ベジタリアンを知る」から一部編集して掲載しています。連載一覧はこちら
執筆:NPO法人日本ベジタリアン協会代表 歯学博士 垣本 充
菜食と地球温暖化問題
世界的に見て健康の理由でベジタリアンになる人が一番多いのですが、その他にも、動物愛護、環境保全、途上国援助など様々な理由でベジタリアンのライフスタイルを選ぶ人が増えています。
今回は菜食と環境問題、なかでも「地球温暖化問題」、そして、菜食で地球温暖化を防止しようとする「ミートフリー・マンデー」について特集したいと思います。
国連・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長で2007年ノーベル平和賞受賞者のパチャウリ博士は「肉の消費量を減らせば、地球温室効果ガスを効果的に減らせる」と主張しました。
その内容は、牛などが直接出すメタンガスだけではなく、牧場づくりのための熱帯林の伐採や、飼料や肥料の生産や輸送など食肉産業全体が排出する二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスは全体の約18%になり、この割合は自動車などの輸送機関で生じる温室効果ガス13%(IPCC試算)を上回るというものです。
ミートフリー・マンデー(肉なしの月曜日)
パチャウリ博士の提言をうけて、2009年に英国ロンドンで元ビートルズのポール・マッカートニーがミートフリー・マンデー(肉なしの月曜日)、すなわち、週に一日、肉を食べないことで地球温暖化を防止させようと、この運動を始めました。ポールの知名度もあり、この運動は瞬く間に欧米を中心として世界中に広がりました。
米国ではミシガン州知事がこの運動を支持し、カナダのケベック州、ベルギーのケント市やドイツのブレーメン市は週1ベジデーを制定。世界的なスポーツブランド「プーマ」は本社食堂(ドイツ)で月曜を菜食の日にしています。我が国でも、パチャウリ博士の支持を得てNPO法人日本ベジタリアン協会がミートフリー・マンデーの運動をくり広げ、今年のポール・マッカートニー日本公演では会場内でミートフリー・マンデー啓発キャンペーンを行いました。
菜食が地球温暖化を防止するのはなぜ?
それでは、なぜ菜食が地球温暖化を防止するのか?なぜ肉食が地球温暖化を推進するのか?について考えてみましょう。
地球上陸地の約3分の1を占める熱帯林は、二酸化炭素を吸収して酸素を放出する光合成を行っています。この巨大な光合成は、温室効果ガスの約65%を占める二酸化炭素の増加を阻止する重要な役割を果たしてきました。
ところが、1960年以降、中南米では熱帯林を肉牛の放牧地にするために開墾しています。ブラジルのアマゾン流域では約70%、コスタリカでは約80%の熱帯林が放牧地などの開墾のために消滅しています。その結果、2011年の米国農務省統計によると、ブラジルは世界一の牛肉輸出国になっていました。
日本に国内産のプレミアムビーフを輸出している米国は、実は世界一の牛肉輸入国で、中南米の安価な牛肉を輸入して1ドルバーガーを実現しているのですが、その背景で、熱帯林の消滅により温室効果ガスが増えて地球温暖化が促進されているのです。
さらに問題なのは、反芻動物である牛によって生じるゲップは二酸化炭素の20倍以上の温室効果を持つメタンを排出します。その量は全世界の生活活動で排出されるメタンの37%にも当たります。同時に牛や豚などの農場では、温室効果ガスの亜酸化窒素が家畜の排泄物から発生します。
このように、菜食を選択することは、健康保持や病気予防だけでなく、地球環境を保全するのです。まさに、ベジタリアンは「人にも地球にもやさしいライフスタイル」の具現者なのです。
NPO法人 日本ベジタリアン協会
日本ベジタリアン協会は、1993年4月設立、2001年2月に特定非営利活動法人(NPO法人)の認証を受けた非営利団体です。「人と地球の健康を考える」をテーマに菜食とそれに関連した健康、栄養、倫理、生命の尊厳、アニマルライツ、地球環境保全、発展途上国の飢餓などの問題に関する啓発や奉仕を目的とし、菜食に関心のある人々に必要な知識や実践方法を広め、共有していくためのネットワークづくりを行なっています。
HP:http://www.jpvs.org/