日本生まれのビーガン食システム 未来食つぶつぶ 2…未来食つぶつぶ創始者・大谷ゆみこ連載
生命システムを破壊し続けている現代の食習慣
かつて日本人が経験したことのない奇異な食習慣の来襲から70年以上の時が過ぎました。それは、40年前には、ほぼ日本全土を覆い、それ以来、すさまじい勢いで津津浦浦まで浸透して来ました。今や私達日本人の日々の食習慣は、それ以前の姿をとどめないほどに入れ替わっています。
その変化を推進したのは次の3つです。ひとつは、政府主導で導入された「栄養学」、もうひとつが、「食の娯楽化」、そして3つ目が「食の工業化」です。
更新されていない日本の栄養学
「栄養学」は、「栄養成分表」とともに、科学的に日本人の健康を守る進歩的なガイドラインとしての地位を得て、あらゆる公的機関の調理や食事指導に取り入れられました。ところが、その後、栄養学という名目で様々な研究が世界的に進む中で、カロリー神話、タンパク質神話、カルシウム神話、ヨーグルト神話、栄養素依存、減塩健康神話、加熱による栄養減衰神話、断油で健康神話、糖質制限神話、などあまたの未熟な研究による健康迷信が流布され一般認識にまで定着しています。いまだに続々と新しい神話が生み出され続け、それらが人々の心身の健康を損なう大きな原因になっています。
一方で、戦後の混乱の中で必死に取り入れた日本の栄養学は、世界で進み続けている最先端の研究を取り入れて随時更新するという初期設定がなされず、信仰のような形で広められたために、今や時代遅れのものになっています。その結果、人々の健康を救う役目を果たせなくなってしまっている栄養学が、多くの食に携わる現場の人間を苦しめています。
社会の変化にともなう食の娯楽化と工業化
戦後急速に発達した映画やテレビなどのマスコミが、西欧をはじめとする異国のごちそう食文化を紹介し、食べることに珍しさや刺激、贅沢を求める風潮を喚起し続け、「食の娯楽化」を推進してきました。「いのちを守り育む食」という意識はまたたくまに希薄になり、人々はテレビが繰り広げるフードショーの言いなりです。食はお腹を満たすエンターテイメントになってしまいました。
さらには、健康状態の悪化による不安に対して、「栄養学」の知識の断片を誇張した情報を不当に利用した健康依存食品もあふれかえっています。
また、核家族化や、女性の社会進出によって、手料理での食生活が困難になる中で、加工食品や外食に依存せざるを得なくなり、工場での大量調理と料理の広域移動が一般的になり、添加物が必要になりました。
健康の危機の犯人は7つの食習慣汚染
その結果は惨憺(さんたん)たるものです。多くの人が、かつて日本人が経験したことのない心身の不調や難病に苦しんでいます。乳児からのアトピーに加え、幼児から始まる近視や乱視、肥満、冷えも便秘も生理痛も、心身症もアレルギーも花粉症も、さらにはガンや糖尿病をはじめとする難病が日常のことになりつつあります。
悲しいことに、日本人がすっかりなじんでしまっている現代食生活は、生命のルールを無視した緩慢な自殺行為とも言えるものになってしまっているのです。
奇異な食習慣の日常化と、多くの人を悩ませている難病をはじめとする心身の危機的状況の深刻化が正比例して進んできたことは、今や誰の目にも明らかです。
心身の健康を損なう現代の食習慣汚染の形を大きく分けると次の7つになります。
7つの食習慣汚染
- おかず重視
- 動物性食品が主役
- 成分依存
- 工場で料理
- 殺菌食
- 毎日がごちそう
- 制限
未来食の提案はいのちを守る7つの食習慣
伝統食の美しいサークルを支えて来た食習慣は次の7つです。
現代の汚染されてしまった食習慣とは正反対、真逆の7つの食習慣によって日本人の健康は支えられて来ました。7つの食習慣汚染に染まる前の日本の日々の食生活は、体という生命システムの運営ルールにかなった生命維持増強システムでした。
いのちを守る食習慣
- ごはんが主食
- 植物性食品中心
- 手料理
- システム活用
- 発酵食
- 日常風土食
- 信頼
ひっくり返った食習慣を本来の姿に戻すことが急務です。食習慣を変えずにあれこれ減らしたりプラスしたりした自然食は効果がないだけでなく、さらに事態を悪化させています。7つの食習慣汚染の真相を知り、本来の食習慣をとりもどすことで、増大している食にまつわる不安や恐れや迷いに悩まされなくなります。
日本生まれのビーガン食システム未来食つぶつぶは、日本人のいのちを支えてきた雑穀を核とする和の食の知恵と技を再構成して現代に甦らせた食の体系と料理術です。7つの食習慣汚染から楽しくおいしく抜け出すことができる日本生まれのビーガン食スタイルの提案です。
穀物のおいしさの秘密
つぶつぶは、個性的な色と食感を持つ雑穀たちの愛称です。品種改良もほとんどされずに今に生き残ってきた雑穀には、力強くしなやかな野生の生命力が宿っています。エネルギーに満ちたおいしさもギュッと詰まっています。
穀物には人間の体に必要な栄養素が絶妙のバランスで含まれています。適量のリンも含まれています。天然のリンは、骨の形成などに欠かせないミネラルで、穀物のうま味の大きな要素になっています。リンにはエンドルフィンという脳内麻薬物質を適度に発生させる効果があります。これが、ごはんを食べるごとに幸せな気分になる秘密です。
このリンは野菜や海草など、ほとんどの植物性食品には含まれていません。人間は、野菜だけの生活では味覚も体も満足できないのです。多くの人がベジタリアンを続けられないのは、生理的な結果、サラダとフルーツでは人間は満足できないというメカニズムを知らないせいです。感情的ビーガンが健康を損なう理由がここにあります。
反対に、肉などの動物性食品やインスタントラーメンなどの加工食品には多量のリンが含まれています。肉や加工食品を食べるとリンの量が多過ぎるために、エンドルフィンが過剰に発生して強烈な麻薬的陶酔状態を引き起こします。
これが、肉や加工食品食べ続けると中毒状態になって止められなくなる理由です。肉食を続けると、それまで感じていた、ごはんを食べることで感じられた至福のおいしさも満足感も感じられなくなってしまいます。
7つの食習慣汚染とそれが引き起こす食汚染によって、体の諸機能を破壊して健康を損なうルール違反の食べ方が普通になっている現代食からの脱出は、今や日本の社会的課題になっています。
2009年にはビーガンの優位性を認めて発表した米国栄養士会
未来食つぶつぶは、体に備わっている機能を高め発揮させることで心身の健康を支える本来の食べ方の提案です。米国栄養士会の声明とも合致するいのちの未来をひらく食体系です。
米国栄養士会の公式声明(2009)
「適切に献立されたベジタリアン食(完全菜食・ビーガンを含む)は、健康的でかつ栄養学的に適切であり、ある種の病気に対する予防や治療に有益であるというのが、米国栄養士会の立場である。適切なベジタリアン食は、妊娠中、授乳中、乳幼児、思春期、青年期、老齢期、そして運動選手を含めて、全てのライフサイクルにおいて適切である」
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未来食つぶつぶ創始者大谷ゆみこプロフィール
1982年から生命のルールに沿ったおいしい「料理のデザイン」とワクワク弾む「心のデザイン」という分野を開拓し先駆的な活動を続けている。
雑穀が主役の健康をもたらす、日本生まれのおいしい食システム「未来食」を提唱。1995年に誕生した「未来食セミナー」のプログラムで、日本各地の何千という人びとに家族ぐるみの健康と幸せのスキルを伝え続けている。
2008年から、女性の目覚めをサポートする天女セミナー&レッスンを運営。
未来食の手料理の魅力と技を伝える「つぶつぶ料理教室」を全国展開、本部は東京早稲田。
暮らしの拠点は広葉樹林と7色の雑穀畑に囲まれた「未来食ライフラボ/いのちのアトリエ@山形小国」。日本ベジタリアンアワード第1回ビーガン賞、第2回大賞、第3回料理家グループ賞受賞。『大人女子は人生を食で奏でる』『未来食7つのキーフード』『つぶつぶクッキングSTARTBOOK』『ごはんの力』『野菜だけ?』など著書多数。
日本で2人目女性初の日本ベジタリアン学会認定マイスター。日本ベジタリアン学会理事。