日本生まれのビーガン食システム 未来食つぶつぶ 3…未来食つぶつぶ創始者・大谷ゆみこ連載
温度と生命活動
自然界を見渡してみると、梅の花が開花するのも、桜の花が開花するのも、温度がサインになっています。種に芽を出す時期だと知らせるのも温度です。温度が低すぎれば種の中のエネルギーは動き出すことができないのです。
冷害という言葉をニュースで聞いたことがあると思いますが、夏に気温が上がらないことによって、元々温暖な地方の作物である米が実を結ぶことができないことを言います。米が貨幣代わりだった江戸時代に、品種改良を重ねて北国でも米を作り、雑穀を作らなくなってしまったことで、何度か冷害が起き、食料が無くて命を落とした人々もいます。雑穀を作り続けた山間地の人々は生きのびたという事実が記録されています。
微生物が活動するにも、それぞれの活動に適した温度が必要です。例えば、酒造りは30度を越えないようにしてアルコール発酵を促すために、冬でないとできません。ぬか漬けの乳酸菌も寒くなると活動できなくなります。パン種の発酵にも温度が必要です。
体を見ても、私たちに、体調の異常を知らせるのは熱、つまり高すぎる温度です。高温過ぎれば火傷をします。寒さが過ぎれば知覚を失い、それが続けば、細胞が機能をストップして死んでしまい凍傷になります。死を迎えた体は熱を失って氷のように冷たくなります。
温度は、生命にとって重要な要素だということを、ふだんあまり意識していないと思いますが、温度が世界の運営に大きな役割を持っていることは様々な場面で観察されますね。
体温が下がると体の機能が低下する
植物と動物では、動物の方が高い体温で運営されるようになっています。そして、動物は種によってそれぞれ違う適正温度が設定されていて、鳥類やほ乳類は高い体温を持ちます。
鳥類は体温が高いので、エコロジストの本には鶏小屋を家に寄せて作ることで暖房する試みが紹介されています。
人間はほ乳類の中では低い体温で生きています。眠くなると赤ちゃんの体温は上がります。
植物だけでなく、人間も含め動物の体の中の様々な化学反応は温度の影響を大きく受けるので、活動も温度の影響を大きく受けることになります。体温は、周囲の温度と体内で作られる熱エネルギーによって変化するので、激しい活動をすれば、多くの熱エネルギーを生じるので体温は上がり、逆に大きな活動をするためにはある程度以上の体温が必要になります。とはいえ、高すぎるのも良くないので汗をかくなどの冷却システムが具わっています。
また、体温が適正体温より低くなると前述のように体の機能は麻痺してしまいます。体温が1度下がると免疫力が30%落ちると言われています。体温が上がると基礎代謝が上がりります。
平均体温一覧です。
- ヒト:36.5度
- イヌ、ネコ:38.5度
- ウサギ:38〜40度
- ハムスター:37〜38度
- ウマ:37.5度
- ウシ:38.5度
- ブタ、ヤギ、ヒツジ:39度
- ニワトリ:42度
- 鳥類一般:38〜42度
食べ物と体温
食べるものには、体にとってクーラー効果のあるものと、ヒーター効果のあるもの、そしてニュートラルなものがあります。
熱帯にはクーラー効果の特に強い野菜、果物、スパイスが成育して、体をクーリングしてくれます。温帯の日本でも夏にはウリ類やナス、果物が育って熱を逃がす働きをしてくれます。熱帯や夏の作物には火を使わず食べられるものが多いのも素晴らしい仕組みだと思いませんか。
逆に寒い地方や日本の冬には熱帯に成育する作物は育ちません。植物の中ではクーラー効果の小さい根菜や海草を、ヒーターの役割をする塩で長時間煮込んだり、塩漬け発酵させて食べることで、体を芯から温めることができます。
氷に閉ざされた地域では動物を食べることをヒーターとして、体温を保って生き抜いてきました。
また、ニュートラルな穀物を主食とすることで、体のゆるがない土台を作り、植物のクーラー効果と塩と火のヒーター効果で適正な体温を保つのがゆるがない体調を作る食システムです。
強烈なクーラー食品であるトロピカルな食べ物とスパイス、強烈なヒーター食品である動物性食品、特に鶏肉と卵と大型動物、どちらの食も食といのちのバランスシートの枠外に位置するほど、冷却効果が強いか熱を持つものなので、温帯地域に住む日本人には必要ないだけでなく、常食すると体の機能が麻痺してしまいます。
ヒーターの肉+クーラーのスパイスでバランスが取れているのか?
バランスシートの極端な位置にある2つの食べ物の組み合わせ、つまり、ヒーターの性質を持つ肉をクーラーの性質のスパイスで中和して食べる食卓が、西洋化した現代の食生活です。ところが、それでは健康は保てないのです。例えば、家が火事になったとしましょう。それを、水をかけて消すことはできますが、元の家に戻るわけではありませんね。水浸しになった燃えさしが残っているだけです。
極端な食事によって体の中がどれほど荒れるかは、この例から類推できますね。
極端な食事でバランスを取るのは難しいだけでなく、実際は取りきれません。最初からニュートラルな食べ物や、適度にクーラー効果や適度にヒーター効果のある食べ物を組み合わせて食べることを、体、つまりあなたの細胞は望んでいます。
細胞が元気なら、体は元気になります。適温に温かい血液から、適温に温かい細胞が生まれ、適温の体を作ります。未来食つぶつぶの実践でそれが叶います。冷えは解消し、新陳代謝が活発になって、体の全器官がそれぞれの働きを円滑に進めるので、ゆるぎない健康が手に入ります。
食べ物の温度が高くても、生理化学的にクーラーな食品
寒い冬に熱々のコーヒーとカレーライスを食べて温まろうとしたことのある人は多いと思います。温度が高いのとカレーを食べると汗が出るので、温まっている気がするのですが、じつは体は生理的に冷えていきます。カレーはスパイスの塊だからです。
ビーガン食生活が日常になっていたある寒い冬の日、友人を訪ねたときに、インド料理のレストランに連れて行ってくれました。本格的なベジタリアンのカレーを食べながら友人とのおしゃべりを楽しんでいたら、だんだん頭がフラフラしてきて目が回り始め、お酒に酔ったときのような感じでソファに横にならずにはいられなくなってしまいました。
また、ヨガを5年くらい続けてインド料理で菜食をしていた方が、私のレクチャーを聞いて、「最初は調子がよくなったのですが、最近力が出ないし疲れやすくなったのは食事が原因だったんですね。」と言って納得していました。
多くの人が健康によいと思っているハーブティーも、クーラー効果が強い飲み物なので、日常的にたくさん飲むのはオススメできません。
何がクーラー効果の食べ物で、何がニュートラルで何がヒーターなのか、学ぶことで、知らずに冷え性になっていて様々な体調不良に悩まされることが無くなり、安心して飲食を楽しむことができるようになります。
前回の記事で2009年の米国栄養士会の報告を紹介しましたが、2016年には、米国・栄養食料アカデミーもベジタリアン食の有用性を認める声明を出していたので、紹介します。
ベジタリアン食に関する米国・栄養食料アカデミーの公式声明(2016)
「植物ベースの食事は、動物性食品を多く含む食事に比べて、より環境的に持続可能であり、環境に与えるダメージは非常に少ない。」
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未来食つぶつぶ創始者大谷ゆみこプロフィール
1982年から生命のルールに沿ったおいしい「料理のデザイン」とワクワク弾む「心のデザイン」という分野を開拓し先駆的な活動を続けている。
雑穀が主役の健康をもたらす、日本生まれのおいしい食システム「未来食」を提唱。1995年に誕生した「未来食セミナー」のプログラムで、日本各地の何千という人びとに家族ぐるみの健康と幸せのスキルを伝え続けている。
2008年から、女性の目覚めをサポートする天女セミナー&レッスンを運営。
未来食の手料理の魅力と技を伝える「つぶつぶ料理教室」を全国展開、本部は東京早稲田。
暮らしの拠点は広葉樹林と7色の雑穀畑に囲まれた「未来食ライフラボ/いのちのアトリエ@山形小国」。日本ベジタリアンアワード第1回ビーガン賞、第2回大賞、第3回料理家グループ賞受賞。『大人女子は人生を食で奏でる』『未来食7つのキーフード』『つぶつぶクッキングSTARTBOOK』『ごはんの力』『野菜だけ?』など著書多数。
日本で2人目女性初の日本ベジタリアン学会認定マイスター。日本ベジタリアン学会理事。