【ベジタリアンを知る vol.12】WHO国際ガン研究機関が発表。加工肉は大腸ガンの発症を18％アップする！

＊この投稿は以前発刊していた会報誌『月刊つぶつぶ』より連載シリーズ「ベジタリアンを知る」から一部編集して掲載しています。連載一覧はこちら

執筆：NPO法人日本ベジタリアン協会代表 歯学博士 垣本 充

加工肉摂取にガンリスク

2015年10月26日にWHO国際ガン研究機関(IARC)(仏国・リヨン)が発表した「加工肉摂取にガンリスク」というニュースは、翌日の米国有力紙「ワシントンポスト」や「USトゥデー」に大きく取り上げられるほど全世界に衝撃をもたらせました。

IARCは1965年にWHO(世界保健機関)の外部組織として、発ガンのメカニズム解明や予防などを研究する目的で設立され、ガン研究に関して国際的に高く評価される多くの研究成果を上げています。食生活と疾病の研究を続けていた私は、食と発ガンの関係について正確な科学情報を得るために、1989年にリヨンのIARC多段階発ガン研究部で研修を受けたことがあります。

今回、IARCが、ガン専門医学誌「ランセット・オンコロジー」に発表した詳細は、10か国22人のガン研究者が800の研究結果を分析したもので、「ハム、ソーセージやベーコンなどの加工肉を1日50グラム摂取すると、結腸、直腸ガンの発ガンリスクは18％増加し、畜肉(牛、豚、羊など)を1日100グラム摂取すると、結腸、直腸ガンの発ガンリスクは17％増加する」という内容で、IARCのガン発症総合評価では、加工肉はタバコやアスベストと同じ最も強い発ガン性を示すグループ1に、畜肉は除草剤のグリホサートと同じ強い発ガン性を示すグループ2Aに分類されました。

この報告によれば、加工肉50グラムはホットドッグ1本とベーコンスライス2枚に相当し、加工肉は大腸(結腸、直腸)ガンと胃ガン、畜肉は大腸ガン、膵臓ガン、前立腺ガン発症と関連性があるとしています。

肉食が大腸ガン発症に関係することは、古くは1980年代のハワイに移民した日本人の大腸ガン発症率が飛躍的に高くなり欧米(白)人の値に近づくことや、近年の動物性たんぱく質や脂肪の摂取の増加につれて、我が国での大腸ガン発症が増えていることなど沢山のエビデンスがあります。

なぜ加工肉は発ガンリスクを高める？

それでは、なぜ加工肉は発ガンリスクを高めるのでしょうか？

大腸ガンは食生活と深い関係があります。ソーセージやベーコンなどの加工肉は、多量の動物性脂肪を含む食品です。

大腸ガンと脂肪の摂取については、脂肪の摂り過ぎは消化液・胆汁酸の分泌を促します。肝臓でつくられた胆汁酸は小腸で脂肪の消化に関わった後に吸収されますが、その残りが大腸で酵素によって分解されて再吸収されます。

その際に、活性酸素が発生し、それが細胞のDNAを傷つけて大腸ガンを発症させると考えられています。また、脂肪は畜肉に含まれる鉄分と一緒になるとやはり活性酸素が発生しやすくなり、発ガンのリスクを高めます。

さらに、ハム、ソーセージ、ベーコンなどの食肉加工品は多くの食品添加物が使われています。その一例として、ほぼ全ての加工肉に食肉を鮮やかな色に保つ発色剤・亜硝酸塩が使われています。 亜硝酸塩自体に発ガン性はないのですが、亜硝酸塩は消化器官の中で肉や魚に含まれるアミンの一種と結合して、ニトロソアミンという強力な発ガン性物質に変化します。また、ウィンナソーセージに使用される赤色着色料のタール色素も動物実験などで発ガン性の疑いがもたれています。

米国ガン研究財団のガン予防のガイドラインによれば、畜肉は1日80グラム以下に制限することが提言されています。

テレビのワイドショーでもこの話題が取り上げられ、この結果を淡々と伝える番組がある一方で、業者寄りの言い訳がましい説明をする番組もありました。しかし、今回の結果については、信頼性の高い研究機関の発表であり、その結果を重大に受け止めるべきだと思っています。

NPO法人 日本ベジタリアン協会
日本ベジタリアン協会は、1993年4月設立、2001年2月に特定非営利活動法人（NPO法人）の認証を受けた非営利団体です。「人と地球の健康を考える」をテーマに菜食とそれに関連した健康、栄養、倫理、生命の尊厳、アニマルライツ、地球環境保全、発展途上国の飢餓などの問題に関する啓発や奉仕を目的とし、菜食に関心のある人々に必要な知識や実践方法を広め、共有していくためのネットワークづくりを行なっています。
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