【ベジタリアンを知る vol.13】カフェインを含むエナジードリンクで死亡！ サプリメントは必要か？　安全か？

＊この投稿は以前発刊していた会報誌『月刊つぶつぶ』より連載シリーズ「ベジタリアンを知る」から一部編集して掲載しています。連載一覧はこちら

執筆：NPO法人日本ベジタリアン協会代表 歯学博士 垣本 充

サプリメントは効果がない？

サプリメント、略称サプリはよく知られている栄養用語です。サプリメントは、食事で不足気味なビタミンやミネラル、アミノ酸などの栄養素を補給する食品を意味しています。最近では、ダイエット効果や慢性病の予防効果を表示した多種多様な製品が出回っています。

ところが、2013年、ジョンズ・ホプキンス大学の研究者が『米国内科学会誌(AMI)』に、心臓病やガン、認知症や言語記憶、心筋梗塞などに対して、ビタミンやミネラルなどのサプリメントは効果が無かったという結果を発表しました。

著者の一人であるミラー医師は「健康維持には、効果のないサプリメントをやめ、果物、野菜、種実類、豆類や低脂肪乳などの食品を摂取して運動することだ」と主張しています。

ただし、遺伝性の自己免疫疾患であるセリアック病*のような栄養素を吸収出来ない人にはビタミンのサプリメントが有効であることが明らかにされています。これは、健康維持というよりは、特定疾患の治療薬のような役割を果たしているのです。

また、英国などで植物性食品のみを食べるビーガンが貧血予防のためにビタミンB12のサプリメントを服用する例があります。しかし、海苔などの海藻を食べる習慣のある日本では、ビーガンがビタミンB12欠乏性貧血を発症する例はほとんど見られず、このようなサプリメントは必要ないとされています。

米国有力紙のニューヨーク・タイムスでは、「ファーストフードを爆食いしてもサプリメントを沢山飲めば大丈夫なんてナンセンス。悪い食生活をサプリメントで補えるなんて思ってはダメ」という、生活習慣病研究者のコメントを載せています。

サプリメント「エフェドラ」の副作用、汚染物

さらに、サプリメントで問題とされているのが副作用や汚染物です。

アメリカで、年間1200万人から1700万人の人々が利用していたとされるダイエット・サプリメント「エフェドラ」に対して、2003年、アメリカ政府は販売禁止の処置を取りました。販売禁止となった理由は、このサプリメントの副作用によって、多くの被害者が出てしまったこと。アメリカでのエフェドラの被害は、100名を超える死亡例と、多くの副作用症例が報告されています。

エフェドラは中国で麻黄 (マオウ)と呼ばれ、有効成分としてエフェドリンを含む植物です。

エフェドリンによる有害作用としては、めまいや頭痛、食欲減退、不安神経症、胃腸障害、不眠、高血圧などを引き起こすことがあります。エフェドリンとカフェイン、その他の興奮剤を同時に摂取すると、めまい、震え、頭痛、不整脈、心臓発作、精神病、脳卒中などが誘発される可能性があり、特に、心臓病や高血圧、甲状腺疾患、糖尿病、不安神経症、緑内障などの病気がある人は、症状を悪化させる危険性があります。

最近大きな話題となりましたが、2017年末(12月21日付)の毎日新聞によれば、「エナジードリンク」と呼ばれるカフェインを含む清涼飲料水を大量に飲んだ20代の男性が中毒死した問題で、福岡大学は解剖の結果、カフェインの血中濃度が致死量に達していたことを発表しました。胃の中からカフェインの錠剤も見つかり、解剖した久保真一教授（法医学）は記者会見で「短期間の大量摂取は危険だ」と注意を呼びかけました。

2017年4月にスタートした「機能性表示食品」の新制度は、科学的根拠や表示内容を消費者庁へ届け出るだけで、企業自身の判断で安全性や機能性について商品パッケージに表示できます。この新制度の対象はサプリメントだけでなく、飲料など多種多様な食品が含まれます。サプリメントや清涼飲料で死亡例がある現状を踏まえれば、この新制度の問題点が見えてくるような気がします。

＊セリアック病(グルテンによる自己免疫疾患)：グルテン・アレルギーにより小腸の粘膜に炎症が生じなどして栄養失調をきたす病気で、遺伝的な要因が大きいとされている。

NPO法人 日本ベジタリアン協会
日本ベジタリアン協会は、1993年4月設立、2001年2月に特定非営利活動法人（NPO法人）の認証を受けた非営利団体です。「人と地球の健康を考える」をテーマに菜食とそれに関連した健康、栄養、倫理、生命の尊厳、アニマルライツ、地球環境保全、発展途上国の飢餓などの問題に関する啓発や奉仕を目的とし、菜食に関心のある人々に必要な知識や実践方法を広め、共有していくためのネットワークづくりを行なっています。
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