《雑穀栽培レポート vol.2》雑穀の種の選別方法と種まき
この投稿はつぶつぶマザーの岩崎信子さんのブログ記事を一部編集して掲載しています。
雑穀栽培レポート 前話 vol.1はこちらから
2020年5月吉日、埼玉県小川町のつぶつぶマザー岩崎信子さんのご自宅で開催された、雑穀栽培の体験に参加してきました。この雑穀栽培の体験レッスンは、今年で3年目を迎えています。年間を通して月一回参加することで、雑穀栽培に必要な土づくりから種まき、収穫、調整までトータルに学ぶことができます。
この日は私のほかにも埼玉や東京などから4組の参加者さんがいらしていました。どなたも未来食つぶつぶや農作業が大好きな方ばかり。開始前の自己紹介だけでその熱意がひしひしと伝わってきます。
毎年、全国各地から雑穀の在来種を種から育てる方法を学びたい方々が小川町へ集まり、学んだあとはそれぞれの地域に戻って、各々が雑穀の栽培をスタートしています。信子さんは自分の畑に種をまくだけではなくて、全国各地に雑穀栽培を広げる種まきをされているんですね。素晴らしい活動だと思います。
5月の今回は、雑穀の種の選別方法と種まきを学びました。
毎回10時から15時半までの体験で、一日がかりなのでランチも付いています。ランチを参加者みんなで作るところから、レッスンはスタート。スナップエンドウの筋をとったり、白菜を切ったり、お米を研いだり。どんなランチになるかワクワクしながら、手分けして作業をします。
今回のランチメニューは、こちら。
- カレー風味高キビごはん
- 五穀ごはん
- フノリと生姜のスープ
- スナップエンドウと板麩のソテー
- 白菜の煮びたし
全て雑穀と野菜のみを使って調理する未来食つぶつぶのレシピで作ります。醤油やカレー粉などの調味料も厳選された本格的なもののみ使用。これでおいしくならないわけがありません。
ランチを楽しみにしながら炊飯器にお米をセットして炊けるまで、まずは雑穀の種の選別方法の実習です。
栽培体験ができる支度をしてからテラスに出ると、まだ茎に実がついた状態の雑穀がズラーっとテーブルの上に並んでいました。去年収穫して、茎ごと乾燥させた状態のものだそうです。
一口に雑穀といっても、こんなにたくさんの種類があるんですね。これらすべて小川町の信子さんの畑で採れた雑穀ということなので驚きです。
手前からヒエ、高キビ、埼玉在来アワ、もちキビ、もちアワ、シコクビエ、うるちアワと並んでいます。赤みや黄色の強いもの、ふわふわした毛のあるものなど、どの雑穀にもそれぞれ強い個性があります。
どれもそれぞれ個性を持ちつつも、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなど豊富な栄養成分を完璧なバランスで備えていて、それを食べる私たち生き物の元気の源になっていると思うと感謝しかありません。
雑穀は、母なる大地とあったかいお日さまのパワーからできた大自然からの贈り物なのだと思います。
種の選別は、この茎に実がついたものを外す作業から始まるのだそうです。そういえば、信子さんの体験レッスンでは、土づくりから調整まですべてトータルに学べるのでした。だから、この作業もすべて一から行うのですね。こんな風に教えてもらうことで、まったく未経験の方でも自分の土地に帰ってから一人で作業することができますね。
こんな風に洗濯板に穂を回転させながらこすりつけて、実を取り外していきます。洗濯板の下には、オレンジ色の手箕が置いてあります。
この写真ではもちキビの実を外していますね。調整する前のもちキビはこんな風に赤みがかった茶色なのですね。
「赤い実を一粒とって、その赤い皮をめくってごらん。いつもの黄色いもちキビが出てくるよ」と信子さんがおっしゃっていました。実際にやってみることで、楽しい発見がたくさんありますね。
雑穀の実を取り外す作業が進んで、ある程度の量になったら目の粗い網で濾してから「風選(ふうせん)」という作業に移ります。この時点では、まだ箕のなかに雑穀の実だけでなく、殻やちりなどが一緒に入っているため、実だけにする作業が必要なのだそうです。
写真にあるとおり、箕を持った方が少しずつ桶に向けて、なかにあるものを落としていきます。洗濯板を持った方が仰いで風をおこします。そうすると、軽い殻やチリは桶に入らず、飛んでいき、重さのある実だけが桶に入ります。よくできたシステムですね。風がほどよく吹いているときは、仰ぐ必要はないそうです。
もっと原始的なやり方で、手箕をザッザッザと振って、ある程度、実を手前に、それ以外を手箕の外側に分けておいて、息で吹いてチリを飛ばすやり方もあります。男性など肺活量のある方にオススメのやり方ですね。チリを吸い込んでしまうとむせてしまうので、風向き注意です。
風選が終わったら、今度は「水選(すいせん)」という作業をします。水をはったボールを用意してそのなかに、風選の終わった実を入れていきます。
そして、指一本で円を描くようにかき混ぜます。
軽い実やチリは沈まずに浮いたままで、出来のよいずっしりとした実だけ沈んでいきます。かき混ぜるだけで沈んでいくので、なんとも不思議な作業です。
苗箱の上に新聞紙を二枚敷いたものを二つ用意して、上の方の上澄みをすくったものをB級品、下の方をすくったものをA級品として、それぞれ新聞紙に広げます。
天ぷらのすくい網のような道具ですくうとラクにできますね。網目は細かい方がいいです。
こちらはチリが多く含まれていることから分かるとおりB級品ですね。
こちらがA級品になります。ボールの底に沈んだエリート君たちですね。このA級品をそれそれの雑穀で新聞紙に広げて乾かすまでが午前の作業でした。
つぶつぶランチをみんなでおいしくいただいてから、午後の部が始まりました。午後はいよいよ種まきです。苗箱にまくり方と土にじかにまくやり方の両方をレクチャーしていただきました。
まずは、苗箱に入れる土の作り方から教わります。栄養分のない山の土ともみ殻燻炭、鶏糞を一定の配合で入れて、下から大きく混ぜていきます。
かなり力のいる作業です。みんなで交代しながら、作業を進めました。配合が決まっていたり、しっかり上下左右を混ぜる必要があったり、足りないところは、もみ殻燻炭を足しながら混ぜたりして、参加者さんからは「料理と似ているね」という声が上がっていました。
よく土が混ざったら、128穴の苗箱に土をふんわりを入れていきます。信子さんは苗箱専用の長さ30センチのブラシを使って、土の高さを調整していましたが、ブラシがない場合は、もう一つの苗箱を土の入った苗箱に重ねて押し付けて、へこませるやり方もあるとのことでした。
やり方が違っても大事なのは、土の深さを一定にすることだそうです。土の深さが違うと芽が出るタイミングが変わってしまうのだそうです。農作業も料理と同じでそれぞれに意味があるんですね。
ここまで来たら、あとはそれぞれの穴に雑穀の種をまいていきます。
利き手じゃない方の手のひらで何粒か種を持って、利き手でパラパラとひねるように種をまいていくとうまくいきます。ひねりゴマの要領と似ていますね。
穴にはサイコロの5のように間隔を空けて、種を置いていきます。アマランサスなどは一粒が本当に小さいので、息の長い繊細な作業です。
参加者さんのなかには、信子さんからマイ畑を借りて年間を通じてお世話をすると決めてきている方もいるので、まずはどの雑穀をまくかを決める必要があります。
みなさん、迷いながらも信子さんのアドバイスを聞きながら自分で決めていました。何種類も挑戦する方、1種類で初志貫徹の方、それぞれでした。信子さんのアドバイスにもありましたが、やっぱり、自分の好きな雑穀をまくと食べるのが楽しみで頑張れるかなと思いました。
種まきが終わると、苗箱ごと表面ぎりぎりまで水につけてから並べておきます。あとは、畑に植え替えるまで水やりをして大きくなるのを待つだけです。
ふと目をやると、もうすでに種まきが終わった苗箱が並べてありました。
ここをめくってみると、中はこうなっています。埼玉在来アワが今まさに発芽したすぐのところですね。
これから、どんどん大きく育っていくのですけれど、何にもないことろからよいしょっと芽を出すこの瞬間のエネルギーは、本当に大きいと感じました。植物ほど、今この瞬間を全力で生きることに長けている生き物はいないのではと感じます。
「生きてる!」「出てこれて、うれしい!」そんな声が聞こえてきそうな純粋なエネルギーを目のあたりにしました。
苗箱の種まきの方法を教わったあとは、高キビの種を畑にじかにまくやり方を教わりました。風の草刈りという方法で、草刈りをした土の表層を1センチほどクワで削り、30センチごとに三角クワで穴を掘って、高キビの種を5個ずつまいていきます。このときもサイコロの5のように間隔を空けてまきます。まいたら土をふんわりのせて、そこに藁をしいておしまいでした。藁をしくことで鳥に種を食べられるのを防ぐことができるそうです。ちょうどこれから雨が降るということで、水やりも不要とのことでした。ビニールのマルチをせず、水やりもしないので、自然農の醍醐味を感じます。
3時のおやつに甘酒アイスをいただいて、みんなで感想をシェアしてから解散となりました。参加者さんからは「五感をフルに使った作業が気持ちいい」「水選するとツルツルぴかぴかの種が出てきて感動した」といった感想が出ていました。本当にそうだなあと思いました。
人間は長らく経済を優先して自然を破壊して生きてきました。もしかして人間は自然を破壊しないと生きていけない悲しい性をもった生き物なのかと考えていた時期もありました。でも、この雑穀栽培の体験レッスンに参加して、実際に目で見て思ったことは、雑穀が育ちやすいように人間がそっと手を貸すことはできるということでした。
土の配合にせよ、種まきにせよ、雑穀が育ちやすい環境を作り出すことは人間にしかできないことです。自然を生かすも殺すも人間次第。どうせなら生かす方に情熱を注いで生きてみたい、なぜならそれが、人間を生かしてくれる地球お母さんへの最大の恩返しになるから。そんな思いがあふれた雑穀栽培体験でした。
そしてここには雑穀栽培14年目の岩崎信子さんという信頼できる先生がいて、そこに集う同じ志を持った生徒さんがいます。みんなで心を一つにしながら行う作業は何ともいえない爽快感があります。
次回は6月。今度は苗箱ですくすく育った雑穀の苗を、水脈作りをしてふかふかになった畑に植えるそうです。今回まいた種がどれくらい成長しているでしょうか。次回も楽しみに体験しに行きたいと思います。
未来食つぶつぶ 畑へおいで! 主宰 岩崎信子
文責:つぶつぶ雑穀料理教室あずさ 主宰 丸山あずさ
写真提供:一泉百葉さん
未来食つぶつぶ 畑へおいで!のレッスン一覧はこちら
https://tubutubu-cooking.jp/schools/detail/34 »
雑穀栽培をより詳しく知りたい方へ、本やDVDのご紹介
雑穀の育て方について、詳しくは、下記の書籍またはDVDを参考にしてください。
※ 雑穀のタネは、毎年4月中旬~5月いっぱいを目安に「未来食ショップ つぶつぶ」で販売しています。(農薬や化学肥料を使わずに栽培された在来種の種です。)