【ベジタリアンを知る vol.33】欧米でビーガンが急増!?③-ビル・ゲイツがベジミートに出資・ITリーダーたちの挑戦-
*この投稿は以前発刊していた会報誌『月刊つぶつぶ』より連載シリーズ「ベジタリアンを知る」から一部編集して掲載しています。連載一覧はこちら
執筆:NPO法人日本ベジタリアン協会代表 歯学博士 垣本 充
ベジ(植物性)ミートが最先端企業IT業界で注目されている
マイクロソフト会長のビル・ゲイツとツイッターを創設したエヴァン・ウィリアムズが共同出資をして作った会社が、本物の畜肉と区別がつかないくらい美味しいベジ(植物性)ミートを開発したと、欧米で話題になっています。
そのような状況のもと、テレビ東京の番組「未来世紀ジパング・勃発!世界疑似食開発競争」で、日本の旨味を売り物にしたバーガー店がアメリカ西海岸で大人気を博しているというレポートが放送されました。その店の人気ナンバーワン・メニューは、その名もUMAMI(旨味)バーガー。2016年タイム誌によって「史上最も影響力のあるハンバーガー」と評価されました。
このレストランで使っているコレステロールゼロの肉はインポッシブル・ミートと言われる植物性代替ミートです。つくったのはシリコンバレーのベンチャー企業インポッシブル・フーズで、既に紹介したビル・ゲイツやエヴァン・ウィリアムズが10億円もの巨額な投資をした食品ベンチャーです。
このような食品ベンチャーの一つビヨンド・ビーフを製造販売するサベージ・リバー社CEOのイーサンブラウンは
「人類はこの先もずっと肉を食べ続けるでしょうが、今後の人口増加を考えたとき、本当に肉を家畜から取る必要があるのかと思ったのです。私たちなら植物からも肉をつくることができると考え始めたのです。」
この企業では、栄養学や生物学の専門家を集めて研究を行い、牛肉の構造分子レベルで調べ化学的に解析し、ベジビーフを5年の開発期間を経て完成させました。原料はえんどう豆、サンフラワーオイル、アラビアガムそしてビーツ(砂糖大根)だ。ブラウンが考えたのは人口増加による食糧不足、特にタンパク質不足による食糧危機への対応です。
このように、肉食の米国で畜肉や鶏肉に替わるベジ(植物性)ミートが最先端企業IT業界で注目されているのです。
ビル・ゲイツによる食への提言「フューチャー・オブ・フード(未来食品)」
さて、ビル・ゲイツのブログ『ゲイツノート』に記載された食への提言「フューチャー・オブ・フード(未来食品)」を和訳(要約)してみました。
「2050年までに世界の人口は90億人以上に増加し、肉に対する食欲もそれと共に成長します。肉の需要は2000年から2050年に倍増するでしょう。しかし、肉を育てることは大量の土地と水を必要とし、環境に大きな影響を与えます。簡単に言えば、90億人の肉を生産する方法はありません。しかし、誰もがベジタリアンになるように求めることはできません。だから私たちは資源を枯渇させることなく肉を生産するためにもっと多くのオプション(選択肢)が必要です。いくつかのエキサイティングな新しい企業がこれに挑戦しています。彼らは、鶏肉、牛ミンチ肉、さらには卵まで、植物ベースの代替品をつくり出しています。これらは持続可能に生産される食料です。」
以前にも、アップル創立者の故スティーブ・ジョブズがベジタリアン(ビーガン)だと紹介しました。世界的にみてIT関係者にはベジタリアンが多いようです。
スティーブ・ジョブズがビーガンになったきっかけは、70年代に米国でベストセラーになった『ダイエット・フォー・スモール・プラネット(小さな惑星の食事)』で示された、1ポンドの牛肉を生産するために16倍もの飼料や1万倍の水が必要だと警告する「食と環境問題」に興味を持ったからと言われています。
時代の先端を行くITリーダーたちがベジタリアンに興味を持つのは、食料・環境問題など地球の将来を見据えているからだと言えるのではないでしょうか。
NPO法人 日本ベジタリアン協会
日本ベジタリアン協会は、1993年4月設立、2001年2月に特定非営利活動法人(NPO法人)の認証を受けた非営利団体です。「人と地球の健康を考える」をテーマに菜食とそれに関連した健康、栄養、倫理、生命の尊厳、アニマルライツ、地球環境保全、発展途上国の飢餓などの問題に関する啓発や奉仕を目的とし、菜食に関心のある人々に必要な知識や実践方法を広め、共有していくためのネットワークづくりを行なっています。
HP:http://www.jpvs.org/