【ベジタリアンを知る vol.28】ベジタリアンの重要なタンパク源・大豆を考える —第16回日本ベジタリアン学会特別講演より—

＊この投稿は以前発刊していた会報誌『月刊つぶつぶ』より連載シリーズ「ベジタリアンを知る」から一部編集して掲載しています。連載一覧はこちら

執筆：NPO法人日本ベジタリアン協会代表 歯学博士 垣本 充

国際マメ年：食肉を減らして豆を増やそう

国連食料農業機関（FAO）は、「豆は世界人々の食料飢餓、食料安全保障、栄養不良、環境問題、健康問題に大いに貢献する」として、2016年を「国際マメ年」と制定しました。これは食肉を減らして豆を増やそうという運動で、農水省もこの運動に協力しています。豆類、特に大豆はベジタリアンのタンパク源として大変重要です。

そこで、昨年11月に大阪市で開催された日本ベジタリアン学会第16回大会において、第1回日本ベジタリアンアワード医学賞受賞者で愛知みずほ大学大学院教授(医学博士)の土田満先生の特別講演『最新ベジタリアン栄養学—大豆は良好なタンパク源—』をご紹介したいと思います。

大豆のタンパク質とその他の成分

9種類の必須アミノ酸がバランス良く含まれている指標としてアミノ酸スコアが使われています。大豆については1973年にアミノ酸スコアが86だったものが、1985年には100に変更され、植物性食品では唯一、肉、魚、卵、乳製品等と同等な良質のタンパク質であると評価されています。

著者らの調査では、日本人ベジタリアンのタンパク質摂取量は適性量に近く、血漿中の必須アミノ酸と非必須アミノ酸比率は、肉を摂取する一般の健常者と同等である結果を得ています。大豆の栄養成分は、約35％がタンパク質、20％が脂質（コレステロールを含まず、多価不飽和脂肪酸が多い）であり、イソフラボン、大豆サポニン、大豆レシチン、オリゴ糖等の機能性成分を含有しているのが特徴です。

大豆・大豆食品の健康効果

ベジタリアン食の健康効果は良く知られていますが、大豆も世界の5大健康食品として選出されています。米国食品医薬品局では大豆に心臓病のリスクを軽減する作用があるという健康強調表示を認めています。著者らの調査でも、大豆タンパク質の血糖値やインスリンに対する好影響が認められています。その他、更年期障害の緩和、骨粗しょう症予防効果等が報告されています。

デザイナーフーズプログラムでは、ガン予防に最も有効とされる8種類の野菜のなかに大豆が挙げられています。米国ガン学会は豆腐などの伝統大豆食品の摂取は、乳ガン・前立腺ガン・子宮内膜ガンのリスクを軽減するであろうとし、わが国のJPHC Studyでも、イソフラボンを沢山摂取している女性は、乳ガンになるリスクが低いことを報告しています。

大豆イソフラボンが腸で変化したエクオールという成分について、健康効果が大きく、大豆をよく食べている人は産生する割合が高いのです。欧米の研究では、ベジタリアンではエクオールを作れる人の割合が高いと言われています。

以上が土田先生ご講演のうち、「大豆の栄養と健康」に関するダイジェストですが、その他にも、世界の長寿地域の疫学調査では、長寿者の共通した食習慣として大豆などの豆類の摂取を挙げています。

また、米国での家畜の1年間の飼料大豆は8億人の飢餓を救うなど食料問題として、さらに、食肉に比べて同じ高タンパク質で二酸化酸素排出量が少なく、生産効率が良い大豆を摂取することで環境問題にも寄与することが報告されました。

持続可能な食料生産と健康的な食生活において豆類は重要な役割を果たしています。特に、豆類は中南米やアジアなど貧しい地域で作られる栄養豊富な食料源として重要な作物です。

日本では、その大豆を味噌や醤油、納豆にして日々食べてきました。大豆の難点は消化が悪いことですが、それを解消するのが日本の発酵食文化で、日本型ベジタリアンには欠かせない食べ物と言えるでしょう。

NPO法人 日本ベジタリアン協会
日本ベジタリアン協会は、1993年4月設立、2001年2月に特定非営利活動法人（NPO法人）の認証を受けた非営利団体です。「人と地球の健康を考える」をテーマに菜食とそれに関連した健康、栄養、倫理、生命の尊厳、アニマルライツ、地球環境保全、発展途上国の飢餓などの問題に関する啓発や奉仕を目的とし、菜食に関心のある人々に必要な知識や実践方法を広め、共有していくためのネットワークづくりを行なっています。
HP：http://www.jpvs.org/